奈良公園(奈良市)東側にある若草山は標高342メートル。山が菅笠の形をして、三つの頂が重なって見えるため「三笠山」とも呼ばれます。手前から三つ目の頂「三重目(さんじゅうめ)」からは古都奈良の雄大な景色を一望でき、2003年には、写真家らでつくる団体「新日本三大夜景・夜景100選事務局」主催の「新日本三大夜景」に選ばれました。
この山焼きは奈良の冬の代表的行事です。「若草山焼き行事実行委」や県によると、由来は山頂の鶯塚(うぐいすづか)古墳(前方後円墳)に葬られた悪霊を鎮める供養とされています。しかし、人々が勝手に火をつけるため、幕末に東大寺、興福寺、奈良奉行所の立ち会いの下、焼くようになったようです。
近年は毎年1月第4土曜に実施。当日の御神火(ごしんか)は、飛火野(とびひの)である「春日の大とんど」からもらい受け、春日大社と両寺の神職や僧侶と奈良奉行所の役人にふんした人など約40人が聖火行列で末社の水谷(みずや)神社まで火を運びます。火は松明(たいまつ)で若草山麓の野上神社に移され、祭壇前のかがり火に点火。祭礼後に大かがり火にも火をともします。続いて、山焼き前に花火を打ち上げた後、市消防団員約300人が大かがり火から松明に移した火を一斉に山に放つと、炎がまたたく間に広がります。
2022年も新型コロナ対策をしながら、1月22日に実施されますが、奈良公園での観覧は事前登録制で、既に受け付けは終了済み。しかし、インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信され、夜空を赤々と染め上げる様子を自宅で楽しめます。
(奈良まほろばソムリエの会会員 松田雅善)
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