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第44回 2022年03月17日掲載
「す」 スリルを味わう谷瀬の吊り橋
 県の最南端に位置する十津川村。豊かな自然あふれる村に「谷瀬(たにぜ)の吊(つ)り橋」はあります。長さ297メートル、高さ54メートル。生活用の吊り橋としては日本一の長さを誇ります。
 同村観光協会によると、造られたのは60年以上前の1954(昭和29)年。それまでは川に丸木橋を架けていましたが、洪水のたびに流されるため、地元の人が1戸当たり20万~30万円を出し合い完成させました。まさに生活のための橋です。
 当初、村人だけが利用していましたが、次第に世間の注目を集め、今では十津川村を代表する観光地になりました。それは、渡ること自体を楽しめる、スリル満点の橋だからです。
 入り口には「一度に20人以上はわたれません」という注意書き。一歩踏み出すと、橋は途端に揺れ始め、床板がギシギシと音を立てます。歩く人が多いと、揺れ方が不規則になり、思うようにバランスを保てません。足元から、はるか下の十津川が丸見えで、思わず足がすくみます。普段の生活では味わうことのできない体験です。2021年には土木学会選奨土木遺産に認定されました。
 対岸の谷瀬地区には「ゆっくり散歩道」が整備され、展望台まで進めば、吊り橋を一望することができます。
 南朝の史跡「黒木御所跡」も見逃せません。後醍醐天皇の皇子・大塔宮護良(おおとうのみやもりよし)親王がこの地に逃れた際、かくまわれたとされる仮宮殿(かりきゅうでん)跡です。
 ぜひ橋に足を運んで、ドキドキ感と絶景を満喫してください。きっと非日常の素敵(すてき)な思い出を残してくれると思います。

(奈良まほろばソムリエの会会員 礒兼史洋)

【谷瀬の吊り橋】
(住所)十津川村上野地65の2
(交通)近鉄大和八木駅、JR五条駅からバス「上野地」下車すぐ▽黒木御所跡は上野地から橋を渡った対岸の谷瀬地区
(渡橋料金)無料
(駐車場)有料
(電話)0746・63・0200
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