大安寺といえば、がん封じの寺として信仰を集めていますが、奈良時代の平城京で壮大な伽藍(がらん)を誇る国家の筆頭寺院であったということをご存知でしょうか。
『大安寺伽藍縁起并流記(ならびにるき)資材帳』によれば、聖徳太子が創建した寺院・熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)に始まります。のちに舒明(じょめい)天皇の百済大寺(くだらのおおてら)に継承され、我が国最初の官寺(国立寺院)となります。その後、高市大寺(たけちのおおてら)、大官大寺(だいかんだいじ)を経て、平城遷都にともない現在の地に移され、大安寺と名称を変えました。『扶桑略記』には「大官大寺を改め大安寺とする」と記されています。
大安寺は、東大寺、西大寺と並んで「南大寺」とも呼ばれ、約26万平方メートルの広大な敷地です。南大門、中門、金堂、講堂が一直線に並び、南大門の南に相対して東西の七重塔が建つ伽藍配置で、塔は推定70メートルもの高さがあったといいます。
また、長大な僧坊が建ち並び、その中に887人の僧侶が居住し、勉学修行に励んでいたとされます。しかし、時代の変遷とともに次第に衰退し、当時の伽藍は全て消滅してしまいました。
そこで大安寺は「大安寺天平伽藍CG復元プロジェクト」の資金をインターネットで募るクラウドファンディングで集めました。完成したCG(コンピューターグラフィックス)が3月26日から大安寺嘶堂(いななきどう)で公開され、伽藍を見ながら、ゲームコントローラーを操作して境内を歩いたり、上空に浮かんで堂塔を見下ろしたりできます。
みなさんも往時の姿を体験してみてはいかがでしょうか。
(奈良まほろばソムリエの会会員 森田康義)
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