平安時代初期に空海が創建に関わったとされる、元号寺院の古刹(こさつ)。山門をくぐると高台に建つ県指定文化財の本堂のどっしりとした姿が望めます。その軒下で異彩を放っているのが数学の問題や解法を記した絵馬の算額。2点あり、ともに奈良市指定文化財です。
正面は1858(安政5)年奉納で縦1・22b、横2・43b。和算家の石田算楽軒(さんがくけん)の文字、その姿は彩色で描かれ、隣に問題と答え。算楽軒はこの地域の人で、大和内外の多くの門弟の名前も並んでいます。正面左側の一回り小さいほうは1827(文政10)年奉納。現在の天理市南六条町の和算家、奥田政八らが奉納したもので、計算で使う算木が描かれています。
江戸時代、算額の社寺奉納が流行し、全国で約900点、県内には5点伝わっています。石田算額には全国でも最多とされる49桁(けた)の数字が登場、奥田算額は珍しい9乗根を求めた問題です。秘仏の本尊・虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)立像は知恵に御利益をもたらすとされ、この寺への奉納につながったとみられています。
【奈良まほろばソムリエの会理事 久門たつお】
■宗派 高野山真言宗
■住所 奈良市虚空蔵町46
■電話 0742・62・9303
■交通 JR・近鉄奈良駅からバス「窪之庄南」下車、徒歩30〜40分
■拝観 9時〜17時(3月〜11月)、9時〜16時(12月〜2月)
■駐車場 有(無料)
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