朝護孫子寺は今から1400年余り前、聖徳太子が物部守屋との戦いに臨み、感得した毘沙門天像を祀(まつ)ったことに始まり、その山を信ずべし貴(とうと)ぶべき山として「信貴山」と名付けたと伝えられます。信貴山は古代より河内と大和の境にそびえる要衝地でした。戦国時代には木沢長政、松永久秀などの武将が山城、住居を築きました。
本堂横の道を登って雄岳の頂上に達すると、「信貴山城址」の石碑や空鉢護法堂(くうはつごほうどう)があります。空鉢護法堂では、一願成就の竜王(通称巳〈み〉いさん)が祀られています。運が良ければ近くの社務所で竜王の生き神さまの白蛇にお会いできます。
「空鉢」は平安後期の国宝『信貴山縁起絵巻』(全3巻)の「飛倉の巻」に出てきます。同寺中興の祖、命蓮(みょうれん)は、布施を疎ましく思った長者の倉を法力で米俵ごと空鉢に載せて飛ばします。驚き嘆く長者に命蓮は慈悲の心を諭して福徳を授けました。同寺の霊宝館では絵巻の写しが展示されています。
天気の良い日には大和三山を含む奈良盆地も眺められる場所で、古に思いを馳せてみませんか。
【奈良まほろばソムリエの会 理事 清水千津子】
■宗派 信貴山真言宗
■住所 生駒郡平群町信貴山2280の1
■電話 0745・72・2277
■交通 JR・近鉄王寺駅からバス「信貴大橋」下車、徒歩約5分
■拝観 境内散策自由、霊宝館300円(特別拝観時は別料金)
■駐車場 有(有料)
|