宇陀川をはさんだ対岸の岩壁に刻まれた弥勒磨崖(まがい)仏(国史跡)、通称「大野寺石仏」はつとに有名ですが、当寺は今一つ、人々のあつい信仰を集める「身代わり焼け地蔵」で知られます。
永正年間(16世紀初頭)に当地の郷士、杉山平左衛門の家が火災で全焼した際、奉公していた下女おなみに放火の疑いがかけられます。身に覚えがないおなみは、火あぶりの刑にもかかわらず一心に祈り続けます。すると半身の焼けた地蔵が光と共に立ち現われ、おなみは傍らの石の上で助かったといいます。無実の娘を救った地蔵こそ、本堂に安置されている木造地蔵菩薩(ぼさつ)立像(重文)とされ、快慶の流れをくむ慶派仏師の作と伝わります。
役行者が開き、後に空海が室生寺を創始した際、西の大門として御堂を建てたという古い歴史をもつ当寺の境内は、春に樹齢三百年ほどのしだれ桜が2本咲き誇ります。小糸しだれ桜と呼ばれる珍しい種類で花は白色。樹齢百年ほどの紅しだれ桜も10本あり、咲きそろうと一帯はあでやかな雰囲気で満たされます。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 大久保衞】
■宗派 真言宗室生寺派
■住所 宇陀市室生大野1680
■電話 0745・92・2220
■交通 近鉄室生口大野駅から徒歩約5分
■拝観 9〜17時(冬期は16時)、300円
■駐車場 有(無料)
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