桜井市忍阪(おっさか)は神武東遷の大室屋(おおむろや)、忍坂坐生根(おしさかにいますいくね)神社、布通姫(そとおりひめ)生誕の玉津島明神などの伝承地であり、また奥の谷には舒明(じょめい)天皇陵、鏡女王(かがみのおおきみ)の万葉歌碑と墓、大伴皇女墓などが点在し、忍阪街道筋に続く家並みと調和した、古(いにしえ)の愛と祈りが息づくふるさとです。
石位寺から南は三輪山、北は多武峰の山並みが見渡せ、眼下に忍阪区全体が望めます。境内に立つ中世の供養碑群からは当時からの住民との深い関係がしのばれます。
石位寺の一番の魅力は「伝薬師三尊像」です。昨年保存修理され、今年1〜3月には東京国立博物館の「出雲と大和」展に出展され、「謎多き最古級の石仏」と話題を呼びました。忍阪に帰山、開眼法要のあと、4月26日からお寺でその端正な姿が再び拝観できます。白鳳時代に製作されたという慈愛に満ちた表情の石仏を前にすると、離れがたい思いにかられます。
この寺が約250戸の忍阪区民に守られ、維持されているだけでなく、忍坂坐生根神社や玉津島明神の灯明も区民によって毎晩交代で点灯されているそうで、深い郷土愛を感じます。
【奈良まほろばソムリエの会 副理事長 小野哲朗】
■住所 桜井市忍阪870
■電話 0744・42・9111(市観光まちづくり課)
■交通 JR・近鉄桜井駅からバス「忍坂」下車、徒歩約5分
■拝観 要予約(桜井市観光まちづくり課)
■拝観料 300円
■駐車場 有(無料)
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