白毫寺(びゃくごうじ)は万葉集に詠まれた高円山(たかまどやま)のふもとにあり、境内からは奈良盆地を一望することができます。天智天皇の第七皇子、志貴皇子(しきのみこ)の離宮があり、その山荘を寺にしたものと伝わっています。
奈良市指定文化財の本堂は、江戸時代に再建されたもので、簡素で力強い造りです。静寂に満ちた厳かな空間のなかに、阿弥陀(あみだ)三尊の姿が浮かび上がってきます。すっきりとして若々しいお顔立ちの阿弥陀如来と、その両脇に大変珍しい前かがみの姿勢で控える勢至菩薩(せいしぼさつ)と観音菩薩。膝を軽くついて腰を浮かし、衣はふんわり翻(ひるがえ)り、今まさに恭しくお迎えにあがった、という来迎(らいごう)の瞬間を切り取っています。
本堂の裏手の宝蔵(ほうぞう)には、本尊の阿弥陀如来のほか、冥界(めいかい)の主である鬼気迫る表情の閻魔王(えんまおう)など、重要文化財の仏像8体がおさめられます。本堂の阿弥陀三尊が醸し出す穏やかで心安らぐ雰囲気とは対照的な、冥界の異様さにも触れることができるでしょう。
関西花の寺十八番札所としても知られ、春には五色椿、秋には萩など、四季折々の花が境内を彩ります。これからは紅葉や寒桜が見ごろを迎えます。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 梶尾怜】
■宗派 真言律宗
■住所 奈良市白毫寺町392
■電話 0742・26・3392
■交通 市内循環バス「高畑町」下車、徒歩約20分
■拝観 9時~17時、500円
■駐車場 無
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