懐かしい風景が残る明日香村では、緩やかな斜面に沿ってつくられた棚田がいくつか見られます。日本の棚田百選に選ばれた稲渕(いなぶち)地区の棚田が規模も大きく有名ですが、石舞台古墳の東、飛鳥川上流の冬野川に沿った深い谷筋にも細川の棚田が東西に広がります。
同じ飛鳥でもこの辺りでは観光客の姿は少なく、「細川谷古墳群」と呼ばれる小さな古墳の壊れた石が棚田の中からひょっこりと顔をのぞかせます。まるでもう一つの石舞台古墳のように思えます。
水を張ったばかりの初夏、夕暮れ時の棚田は特に美しく、空を映して赤く染まりだんだんと色を変えていきます。背後にそびえる二上山(にじょうざん)が視界に入ることで、棚田の風景はより大和らしさを感じさせてくれるでしょう。
棚田に眠る古墳を探しながら歴史を感じてみてください。明日香の里はこれから緑が美しい季節を迎えます。
【奈良まほろばソムリエの会理事 道ア美幸】
|