近鉄吉野線葛駅ホーム案内板の「大和清九郎の墓 南東3.5`b」に好奇心をそそられ、何者だろう? と思案していると、地元の方が近くの因光寺(いんこうじ)に清九郎像があると教えてくれました。
1678(延宝6)年、清九郎は現在の高取町に生まれました。33才で妻を、42才で娘を失い仏法に深く帰依します。母を背負っての寺参りなど孝行心厚く、それを知った高取藩主からの褒美の米5俵も「子が親に孝行するのは当たり前」と辞退。代わりに領内の薪(まき)の伐採権を与えられました。
寺の境内には親鸞聖人の逮夜(たいや)の仏飯用の薪献上に上洛する清九郎像があります。清貧生活の中に、彼の徳を感じた盗賊も改心したそうです。清九郎の墓へは風薫る山道を歩きます。時折、ウグイスが「ホ〜法華経」と念佛を唱えているようでした。
妙好人(みょうこうにん)とは、この世の栄達を無視して信条に生きる人のことです。清九郎像は、人の世の誠を語り続けていくことでしょう。
【奈良まほろばソムリエの会 田原敏明】
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