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第72回 2018年06月28日掲載
ダムに沈む「濡れ地蔵」 ―― 宇陀市の摩崖仏


全身が見えている濡れ地蔵=いずれも宇陀市で

 宇陀市榛原山辺三に「濡(ぬ)れ地蔵」と呼ばれる磨崖仏(石仏)があります。場所は、室生ダム入口の「榛原ふれあい広場」の近くです。夏から秋にかけて、川岸でお地蔵様を拝むことができますが、ダムの水位が上がる11月〜翌6月は、お地蔵様がダムに水没してしまいます。「濡れ地蔵」という呼び名は、背後の山から水が湧き出て常に濡れていたことが由来とされ、ダムが完成する1974(昭和49)年以前からだそうです。
 梅雨と台風に備えてダムの水位を下げる5月後半からお地蔵様は徐々に姿を現し、半身だけ水に浸かった姿はどこか幻想的で神々しさすら感じます。石には刻銘「建長六年甲寅、八月十五日建」とあり、歴史のあることが分かります。ダム建設時、移転することも検討されたそうですが、石がもろくて断念したそうです。
 毎年9月末には地蔵会式が行われ、今も地元の人に大切にされています。

【奈良まほろぼソムリエの会 楠田英雄】



半身だけ姿を現した濡れ地蔵

■メモ■

近鉄榛原駅から室生方面へ約4`。無料駐車場あり。
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