講師養成講座2019 これであなたも講師ができる!~パワポを使った講演ノウハウ~

令和元年8月25日(日)、当会啓発グループ主催の「講師講座」が南都銀行西大寺銀行クラブで催されました。今年で6年目(6回目)、鉄田憲男専務理事のこの講座は、この日が最終回で、来年度からは「新入会員説明会」で行われるということです。
まずは啓発グループ担当の大山恵功理事からご挨拶。「講師はどうも敷居が高いようで成り手が少なく、人数が足りていません。皆さんもぜひ手を挙げて下さい。」とお話がありました。会に登録されている講師は、現在25人だそうです。

第1部・講師養成講座
PowerPoint資料の表紙は、林修氏と池上彰氏のテレビでおなじみの画像が飾ります。
鉄田専務理事は「東京のキー局がやっているのと同じようなことが、パワポという『魔法のソフト』があればできるのです」「大学の先生をめざすのではなく、わかりやすい解説者をめざして下さい」と言われ、始まりました。

講演ではPower Pointが必須!
「パワポというのは圧倒的にわかりやすい。特に聞き手が高齢者の場合は、とても喜ばれます」と。プロの講師を呼んで「講師養成講座」をやろうと調べたところ、講師料が半日で10~20万円ほどかかるそうです。そこで鉄田専務理事は、今までの職場での研修の経験と関連本をたくさん読まれてこの講演ノウハウを作られたそうです。(なんて貴重なお話!しかも今回はその資料をつけて下さるのだからありがたい。ぜひご一読を!=末尾にPDFを添付)「ソムリエの会はパワポを使ってわかりやすい講演をする、これを当会のウリにしたかったのです!」と。

「大事なことは、すべてパワポ画面に箇条書きで書いてあるので、思い出しながらしゃべります。大事なことは赤字にしているいるので、見逃しません」「つまり、パワポはお客さんが気づかないカンニングペーパー!これが原稿なしで話せる仕掛けです。講師の強~い味方なんですよ」と種あかしをしてくれました。
講演の3要素は「知識」「話術」「パワポ制作技術」だそうで、「当会の合い言葉は『インプットよりアウトプット!』。単なるインプット(知識の習得)は冥土の土産ですが、アウトプットを目的としたインプットは大事です」と。「知識は本やテレビで仕入れます。話術は回を重ねることで、次第に上達します。習うより慣れろです」とおっしゃっていました。
そして「画面は4の倍数で」「『!』マークは役に立つ」「画面は急いで変えないで。1画面につき2~3分かけないと、お客さんは理解できない」「パワポ資料は途中で方針転換しても、それは消さずに置いておくこと。あとでまた使いたくなりますから」等々話されました。
また、初心者の方たちにも気が楽になるように「パワポの上映には失敗がついてまわります。たいがいどこかでつまずく。でももし画面が映らなくても、あらかじめ画面のプリントアウトを配布しておけば、紙だけで話ができるのです」と言われました。
また写真が得意でない人は、「真正面」から「広く」撮ることを強調されていました。

事前準備
「講演の善し悪しは、準備で『9割』が決まる!」と言われ、「よくわかりました」「とても面白かったです」が最大の誉め言葉。「勉強になりました」は往々にして「難しすぎた」ということだそうです。無料でダウンロードできる写真などを使ってはめ込むと、画面が柔らかい感じになるそうです。良い解説者はポイントを絞っていて、やはりお手本は林修氏や池上彰氏!
(そして何やらごそごそと、まるでドラえもんポケットから出てきたかのように小道具が次々に登場します)
植木鉢の受け皿(100円均一)は、纒向遺跡の太い柱(30㎝)と細い柱(15㎝)の大きさを説明する時のイメージに。「真田丸」の講演に登場した鉄田専務理事のふるさと九度山の真田紐は「ものすごく強いんですよ」とか。高野山の町石をかたどった陶器の文鎮(お母様の手作りだとか!)や、平城宮跡出土木簡のレプリカも出てきます。
また卑弥呼の話では、小さな小さな倭王の印(金印と同じ大きさの積み木)。そして卑弥呼の居館の話の演出に使われたのが…「これが出てきたら、確実にここが卑弥呼の居館跡です!」と「『卑弥呼』と書かれた表札~!」(これには皆さん爆笑でした)
他にも、無料でもらえるパンフレット(『なら記紀万葉・名所図会』の冊子など)は、参考資料にもなるし、お土産に渡すと喜ばれますと紹介されました。

講演当日の心構え
服装(スーツにこだわらない)や持ち物(レーザーポインタや指し棒は、持参すると安心!)、立ち位置を工夫して「お客さんにお尻を見せないように」というお話。また、「座らずに、できるだけ立って話す」「スクリーンではなくお客さんを見て話す」「途中でトイレ休憩を入れると流れを変えられる」「思いつきで話を挿入するとすとたいてい失敗する」や「『エネルギーボール』(両手に大きなボールを持つようなポーズ)は効果的ですよ」「林修先生の『今でしょ!』のポーズです」などどれもこれも大事なことばかりです。
(皆さんは話に乗り遅れないようにと、真剣なまなざしで耳を傾けていらっしゃいました。)

その他の注意事項
お客さんに女性が多いと「場」は和むらしく、「おっちゃんは笑わない。『絶対笑うものか!』みたいな人もいます」(笑)「だから、そんなの気にしないで」と。そして大切なのは「自分が話したい」ことより、「お客さんが何を望んでいるか、よく考えて講演テーマを選ぶ」ということだそうです。

良い講師とは
「自分が話せる得意分野を掘り下げて下さい」と言われ、「話し方(話術)は人それぞれ、見本はあっても手本はない!」ということでした。(なるほど!)

著作権、肖像権に関する注意事項
昨年、ある旅行会社のツアーでの他団体のトラブルを紹介され、著作権、肖像権に関する意識を持つことの大切さをお話しされました。そして、画像のフリー素材サイトやパワポデータの圧縮方法なども教えて下さいました。(詳しくは資料をご参照下さい)

第2部「かるたでわかる!御所・葛城」-鉄田専務理事の講演デモ‐
御所・葛城は、歴史が深すぎて理解するのは難しいということで、地元から「一般市民にわかるやさしい話をしてほしい」という要望が入ります。そこで、「これは『かるた』を使ってやろう!」と思いつかれたとか。(実は、鉄田専務理事、小学3年生の時に毎日友だちと社会科カルタをしていたそうで、覚えた内容を「今でも話せます。」と披露してくれました。)
そして御所・葛城のポイントを当会の『奈良まほろばかるた』から読み札7枚に絞ってわかりやすく講演されました。また、「付属資料をつける」という隠し技も教えていただきました(時間が余った時にすごく役に立つとか)。御所の話では必須の「葛城氏」の話は難しくなるので、今回は付属資料に回し、「興味のある方はお読みください」と。
誰にでも理解できるようにと、おしみなく知識、情報を発信して下さる鉄田専務理事。本当にありがたいです。今回の講演も内容が濃いのに簡潔にまとめて下さり、あっという間に時間が過ぎていきました。そして、参加者の皆さんは、最後まで集中力を切らさずに食い入るように聞かれていました。(ということは、講師の卵がいっぱい!頼もしいです~(^^))

第3部「古代国家の成立」-講演予行演習-
当会啓発グループの藤永泰雄さんが予行演習として、「古代国家の成立~継体から天武、律令国家への道~」を講演されました。初めての講演で、時間配分も苦心して緊張されたようですが、笑顔を絶やさずに和やかにお話されていました。

鉄田専務理事や当会顧問の木村三彦さんから「知っていることを全部話すのではなく、ポイントを絞るといいです」「これと決めたものを深く学んでいくと、もっと良くなりますよ」等とアドバイスを受け、参加者の皆さんも自分のことのようにうなずいておられました。

奈良まほろばソムリエの会は、自分の得意分野を深く掘り下げて勉強して、それをみんなと共有し、高め合って(まさにお互いに「啓発!」しあって)会員同士がつながっていく。そして、奈良の魅力をもっと他の人に知ってもらう。そこが素晴らしくて、「地域再生大賞」優秀賞(2017年)をいただいたのだろうなと思いました。そして、知識・経験豊富な先輩方がたくさんいらっしゃる当会には、どこを向いても先生がいっぱい!新しい会員さんも増えて、学ぶ面白さ、わかる嬉しさ、伝える楽しさ、伝わる喜びが、これからももっともっと増えていくといいなと思いました。

当日のパワーポイント資料

文:広報グループ 増田優子 写真:大山恵功理事、鉄田専務理事