まほろば歳時記

飛火野「冬の鹿寄せ」

1月 鹿寄せ

飛火野に響き渡るナチュラルホルンの音色と共に「鹿寄せ」は始まります。誘われた鹿が列をなして駆け寄ってくる光景や、撒かれるドングリを集団で喰む姿はこのイベントならではの見どころです。明治25年に鹿苑の前身である鹿園の竣工祭で行われたことがルーツだとか。現在は奈良の鹿愛護会のもと冬と夏をメインに行われ、誰もが楽しめる奈良の風物詩となっています。(礒兼 史洋)

明神山「悠久の鐘」 遥か明石海峡大橋を望む(中央右)

2月 明神山 悠久の鐘

恋人たちが永遠の愛を誓い合う、そんな場所が王寺町にあります。明神山山頂に設置された「悠久の鐘」です。プロポーズにふさわしいスポットとして「恋人の聖地」にも選定されました。明神山は標高が低く登りやすい山ですが、その山頂には奈良〜大阪を一望できる大パノラマが広がっています。登山道ではウォーキングや散歩をする姿も多く見られ、地元の方にも愛されていることがうかがえます。(礒兼 史洋)

「ナラディーア」の新クラブハウス 三郷町にて

3月 奈良クラブ

昨年、JFLで見事優勝を飾った「奈良クラブ」は、奈良県初のJリーグチームとして今シーズンからJ3に参入します。チームは「サッカーを通じて、奈良の未来を共に創る」という理念を掲げており、鹿を中央にあしらったエンブレムや、平城京をコンセプトにしたロゴマークなど、奈良らしさを前面に押し出しています。地元のスポーツチームとして、さらなる高みを目指す戦いに注目したいと思います。(礒兼 史洋)

「萬葉植物園」の藤

4月 春日大社萬葉植物園の藤

「萬葉植物園」には、万葉集で詠まれた植物が栽培されています。藤の花もその一つで、4月下旬〜5月上旬にかけて可憐な花を次々と咲かせていきます。園内には20品種、約200本の藤が植栽されており、紫色、ピンク色、白色など様々な色合いを楽しむことができます。また、こだわりの「立ち木造」という展示方法により、藤の花を自然に近い美しさで鑑賞できる点も見どころの一つです。(礒兼 史洋)

吉野川のこいのぼり

5月 五條市吉野川のこいのぼり

春になると、五條市の吉野川沿いにはたくさんのこいのぼりが飾られます。その数200匹以上。春風を受けて一斉に泳ぐ姿は壮観そのものです。これらのこいのぼりは、すべて一般家庭から寄付されたもの。子供達の健やかな成長を願って揚げられていたこいのぼりは、新たな活躍の場で地域の活性化に貢献しています。(礒兼 史洋)

飛鳥水落遺跡

6月 飛鳥水落遺跡

6月10日は「時の記念日」です。日本書紀に記された「鐘鼓によって時を打った」とされる日付から制定されました。使われたのは大掛かりな水時計「漏刻」です。飛鳥時代に中大兄皇子によって建造された、日本初の時計といわれています。その漏刻が造られた建物跡が「飛鳥水落遺跡」とされています。時間に対する概念が当時どういったものであったのか、興味は尽きません。(礒兼 史洋)

「かき氷献氷」氷室神社(奈良市)

7月 かき氷

奈良の新たな食文化として「かき氷」が人気を集めています。そのふわふわとした食感は口当たりが心地よく、美しい盛り付けはSNS映え抜群です。奈良ならではの地域特性として、古代までさかのぼる氷の歴史と文化があります。かつては氷を保存する氷室が存在し、夏には平城宮に献上されていたと伝えられています。そして氷の神様を祀る由緒深き氷室神社の存在。「かき氷の聖地」として更なる発展が期待されます。(礒兼 史洋)

大仏さまお身拭い

8月 大仏さまお身拭い

毎年8月7日、東大寺では大仏さまの一年間のほこりを払う「お身拭い」が行われます。大仏さまの上に人が乗っている光景に目を奪われるとともに、多くの人が乗ってもびくともしないその堅固な造りに改めて驚かされます。お身拭いのほこりをかぶるとご利益があるのだとか。かなりの量が堂内を舞うため、マスク持参がおすすめです。(礒兼 史洋)

桜井市笠地区のそば畑

9月 桜井市笠地区のそば畑

桜井市笠地区に広がるそば畑では、9月中旬から10月上旬にかけて、そばの花が見頃を迎えます。一本一本にたくさんの白い小さな花をつけるそばの花は、丘陵地である周りの眺望と相まって心和む風景を見せてくれます。近くにはここで収穫された「笠そば」をいただけるお店もあり、味覚でもそばを堪能できます。また、日本三大荒神の一つ笠山荒神社はお店からすぐの場所です。(礒兼 史洋)

鹿の角切り

10月 鹿の角きり

「鹿の角きり」は、人とのトラブルを避けるため、また鹿同士で傷つけ合わないために始まった秋の伝統行事です。多くの観客が見守る中、全力で逃げるオス鹿と、捕まえようとする勢子(せこ)と呼ばれる人たちとの攻防は迫力満点です。奈良公園では行事以外でも角を切る作業が行われており、鹿と人が共存する奈良ならではの営みとなっています。(礒兼 史洋)

夕日に染まる曽爾高原のススキ

11月 曽爾高原のススキ

ススキの名所として知られる「曽爾高原」。見渡す限り広がるススキが風に揺れて波打つ光景は、多くの観光客を魅了します。夕日の映えスポットとしても有名で、日が沈むにつれて黄金色に染まりゆくさまはまさに絶景です。秋の象徴として万葉集にも多くの歌が詠まれているススキ。地元では保全活動を通じて、この美しい景観を維持する努力がなされています。(礒兼 史洋)

「日本最初の世界文化遺産」の石碑(法隆寺にて)

12月 奈良の世界遺産

1993年12月11日に、日本初の世界遺産として「法隆寺地域の仏教建造物」が登録され、今年で30周年の節目を迎えました。その後、奈良は「古都奈良の文化財」や「紀伊山地の霊場と参詣道」も世界遺産に登録され、その文化的価値と観光的魅力が一層増したように感じられます。今後は、「飛鳥・藤原」の登録に向けた展開が注目されます。(礒兼 史洋)