まほろば歳時記

1月 登彌神社の「筒粥占い」

登彌神社(奈良市石木町)の「筒粥占い」は2月1日に行われます。春を占う行事ですから一月に紹介いたします。境内に据えられた大釜にお米、小豆と38本の竹筒を入れてグラグラと煮立てます。取り出された竹筒を割り、竹筒への小豆の入り具合で作柄を占うのです。「上」と読み上げられた作物には参列者から歓声が上がり、「下」と出た作物も「注意して育てよう」と明るく受け止められています。(雑賀耕三郎)

2月 三輪川沿いの素麺干し

素麺は真冬に作られます。寒風に晒される素麺干しは、真冬の三輪の風物詩となっています。今でも玉井製麺所(桜井市三輪)は三輪川沿いで天日干しを行っています。「晴天の午前中に干します、ただし強風の日は素麺が切れるから干しません」とのこと、この素麺干しをご覧ください。天日で干した素麺を買い求めることもできます。(雑賀耕三郎)

3月 春日大社の御田植神事

3月15日は春日大社の御田植(おたうえ)祭。御田植の祭祀は公開されていませんが、八乙女が舞う田舞の神事が拝見できます。若宮神社にて午前11時に田主、神楽男、八乙女にお祓いがなされ、林檎の庭、榎本神社前、若宮神社の順で田舞の奉納が行われます。(雑賀耕三郎)

4月 下北山村の桜

下北山スポーツ公園(吉野郡下北山村上池原)の桜並木をご紹介します。大峰山脈を背景とする雄大なロケーションの中、公園内の池に映る桜は見応えがあります。清く澄み、静寂な湖面を持つ明神池をご神体とする池神社は間近です。神社の立地、その由緒も興味深く、参拝をお勧めします。(雑賀耕三郎)

5月 葛城山のツツジ

標高959メートルの葛城山、その山頂付近にツツジが群生しています。「一目、百万本」といわれる紅の広がりにはだれもが圧倒されます。今年は新型コロナウィルスの蔓延防止で、ロープウェイは連休の停止が決まりました。歩いての登山もおすすめはできません。来年の花に期待して、今年は画像だけでお楽しみください。(雑賀耕三郎)

6月 花筏

花筏(はないかだ)は国内各地に自生する落葉低木で、県下でもあちらこちらの山麓で見ることができます。ツキデノキ、嫁の涙(よめのなみだ)の別名でも知られています。葉っぱの上に花が咲いて、6月には実が突起状にふくらみます。この姿の不思議さ、美しさはたとえようもありません。貝原益軒は「ツキデノキ(花筏のこと)、灌木なり・・・食うべし、美味なり」と『大和本草』で紹介しました。(雑賀耕三郎)

7月 安堵町 人形立て

安堵町で栽培される藺草(いぐさ)は、7月の晴れた日に刈り取られ、「人形立て」と呼ばれる方法で天日干しが行われます。この藺草から引き出される髄(ずい)が灯芯として使われます。灯芯は安堵町の「灯芯保存会」が作成、東大寺修二会、薬師寺の修二会、元興寺地蔵会の灯明皿用に奉納されます。藺草の栽培、天日干し、灯芯引きの資料は安堵町歴史民俗資料館で見ることができます。(雜賀耕三郎)

8月 池田町(奈良市)のタイマツの行事

8月14日、池田町は広大寺池の西側の堤防上でタイマツの行事を行います。40本ほどの竹をスノコ状に編み、笹の葉や稲のわらを巻き寿司のように巻き上げます。高さは4㍍、直径1㍍ほどの巨大タイマツは午後6時に点火されます。行事会場へは帯解駅から西へ歩いて10分で到着します。(雜賀耕三郎)

9月 大淀町 大阿太高原の梨

奈良で梨といえば大阿太高原(大淀町)の二十世紀梨、みずみずしくておいしいと評判です。佐名伝(さなて)と薬水(くすりみず)の生産農家は、「日本一おいしい二十世紀梨を」と、毎日の手入れを怠りません。お盆を過ぎると多くの観光客が農家を訪れ、購入されています。ちなみに大淀町のマンホールには梨と鮎が描かれています。(雑賀耕三郎)

10月 桜井市 艸墓(くさはか)古墳

古墳見学は秋から冬がおすすめです。古墳の周辺の下草が枯れ、蛇や虫も動かなくなる時期が古墳探訪に適しています。この秋、先ずは訪れたい古墳は桜井市の艸墓古墳です。大きな家形石棺が残されており、目の当たりに盗掘孔も確かめられます。土砂の流入でしばらくは入れませんでしたが、現在は修復されて自由に出入りできます。(雑賀耕三郎)

11月 正暦寺の紅葉

秋の深まりにつれ正暦寺の楓や銀杏は順に色づいていきます。「錦の里」の名の通り、紅葉で彩られた境内は一幅の画のようです。秋の特別公開として、11月には秘仏 本尊薬師如来像のご開帳も行われます。紅葉のシーズン、JR・近鉄奈良駅から正暦寺への臨時バスも運行されます。正暦寺にお出かけください。(雑賀耕三郎)

12月 天理市福住町別所の「さる祭」

福住町別所の「さる祭り」は、旧暦の11月の申(さる)の日(12月下旬)の行事です。地区の少年たちは、この日、山の神を村から山へ送ります。少年たちは婆羅門杉で知られる下の坊に集まり、長い縄を綯いあげます。御幣とその縄を持ち、「せんざい、まんざい、ごくよう、あさめしくった、はらへった」と元気よく唱和しながら、山の神を送ります。さる祭りを終えて、山里は正月を迎えます。(雑賀耕三郎)