焼損した「中家住宅(国指定重文)」修復へのご支援、ありがとうございました

2024年7月29日の炎天下、枯れ草を焼いていた隣家の火が燃え移り、江戸時代初期に建築された環濠屋敷、中家住宅(生駒郡安堵町)の主屋などが焼けてしまいました。主屋を覆う「大和棟」は、茅葺きと瓦葺きの屋根を組み合わせた奈良盆地に特徴的な屋根です。1968年に国の重要文化財に指定され、中家が代々管理してきました。現当主の寧(やすし)さん(66)は21代目になります。


「柱が残っており、重要文化財としての価値が失われたわけではない」という専門家の見解により、大和棟修復が立案されていきました。ただ、奈良県文化財保存事務所に託し5カ年にわたる修復計画で約5億円がかかり、国などからの補助を受けても、個人負担として約3千万円が必要ということでした。

「あの美しい大和棟をもう一度見たい」という中さん夫妻の悲しみと怒りが、個人で文化財を守ることの難しさを知ってもらいたいという思いと重なり、クラウドファンディングにより支援を募ることとなりました。奈良まほろばソムリエの会から南都銀行のCF窓口を紹介し、手続きが進められました。
修復支援の募集は2025年2月と3月の2か月でしたが、第一目標金額の500万円はすぐに達成し、目標額の4倍となる約2千万円が集まりました。
「火災に遭ったことは悲しいことですが、絶望のなかで、多くの方の温かいご支援や励ましのお言葉にふれ、胸が熱くなりました」と妻の八代さん。「奈良県の方にはとりわけ多くのご支援をいただきました。奈良の地で長い歴史に支えられてきた中家です。今もご先祖様のおかげをいただいているのだと感じました」と夫の尉さんは感謝の思いを語られました。
当会でもホームページなどを通じてクラウドファンディングの情報を発信。多くの会員が支援をされたと聞きました。

二重の環濠に囲まれているため、まず外堀に鉄板をかけ、内堀にはバラスをおいて道を造り、資材を運び込むための準備は完了しています。そのあと大和棟全体を覆う「素屋根(工事の期間中、建物を覆う仮設建物)」を造り、修復作業に取り掛かります。
素屋根ができるまでは、梅雨の雨は容赦なくブルーシートの屋根を打ち付けるでしょう。「何度かシートの交換が必要でしょうね」と八代さんは気丈に語っておられます。
火災から一年が経ち、修復へのスタートがようやく始まりました。