2019 年6月20日

奈良県地域振興部
山下保典部長様

NPO法人奈良まほろばソムリエの会
理事長 豊田敏雄

奈良県指定有形文化財の保存に関する要望書

平素は弊会の活動にご理解、ご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、弊会の保存継承グループは2017年7月~今年4月に奈良県指定有形文化財の建造物、彫刻を対象に「災害対策等現況調査」を実施しました。その結果(別紙)に基づき、貴県として文化財保存のため、以下の施策に取り組んでいただきたく要望いたします。

(1)県指定建造物を対象とする耐震診断の実施を
大地震になると建造物、彫刻とも損壊の可能性があり、所有者としてどの程度の補強が必要かを判断するため、耐震診断の実施を求める声がありました。県文化財保護条例第15条(管理又は修理の補助)の趣旨に沿って、県指定建造物を優先して実施していただく一方、県指定彫刻を安置する非指定建造物についてもご検討をお願いします。

(2)過疎地域で管理が行き届かない仏像などの収蔵・展示施設の設置を
過疎地域などの住職、宮司不在の社寺では近年、地元での管理が行き届かず、仏像などの盗難事案も発生、危機的な状況にあります。また、個々の社寺・地区での収蔵庫建設は困難な情勢です。県の主導で指定・非指定の仏像などの防災・防犯の役目を果たす収蔵・展示施設を、県文化財保護条例第16条(管理又は修理に関する勧告)の趣旨に沿って、例えば県東部と県南部に設置するご検討をお願いします。貴県が2018年12月公表の『行財政運営の基本方針2019』では「地域で大切にされている歴史文化資源に対し、保存・活用の一体的な取り組みを進める」とされており、統廃合後の県立高校跡地も含め、県有施設の利活用の検討を提案いたします。県東部では、旧室生高校の校舎を利活用した県立橿原考古学研究所室生埋蔵文化財整理収蔵センターが運用されており、有形文化財への役割拡大の検討をお願いします。県南部では2020年に吉野・大淀両高校の統廃合が決定されており、学校施設の利活用の検討をお願いします。収蔵・展示施設は教育・研究分野、観光分野での利活用も図っていただくよう要望します。

(3)消防機関への通報直結推進と住民参加の文化財防火デー行事を
防火機器の整備は着実に進んでいます。しかし、火災発生時の消防への通報は気付いた人が行う旧来の人任せが大半で、過疎地域では人任せも厳しい状況です。一方、社寺の中には消防機関への通報が直結されているところもあります。迅速な初期消火のため、このシステムが推進されるよう要望します。また、消防関係者と文化財所有者を中心に毎年1月実施の文化財防火デー関連行事に関して、改めて県民の防火意識喚起のため幅広い住民が文化財に親しみつつ参加してもらえる内容への移行を市町村などと協議していただけるようお願いします。

(4)獣害などの対策強化を
県指定の建造物に対してシロアリ、アライグマなどの動物による被害は調査先の約 6割で発生し、所有者・管理者を悩ませています。所有者らの対応が基本となっていますが、貴県としても獣害・シロアリ被害等への対処法、予防法について関係冊子の作成・配付、県での相談窓口の充実を要望します。

以上

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