御所市:一言主神社 秋季大祭見学記

夏の記録的な猛暑がひと息ついた9月15日、葛城山麓の御所市森脇に鎮座する「葛城坐一言主神社」で、秋季大祭が執り行われました。
室町時代の1482年、世の中の安泰を願って始めた神事で、参詣者が願い事を書いた祈祷串を神火壇に自らくべて祈願することから「御神火祭」「お火焚祭」とも呼ばれています。

彼岸花の咲き始めた葛城山麓の棚田
葛城の先住民土蜘蛛の墓と伝わる蜘蛛塚

「古事記」にも伝わる、全国にある一言主神社の総本社ですが、地元では、どんな願い事でも一言の願いならば叶えてくれる「いちごんさん」として親しまれています。

受付で購入し、裏に願い事を書く祈祷串
社殿前の祓戸社にて神職、氏子代表の修祓
一般参詣者へのお祓い

いよいよ午前10時半から祭典の開始です。
宮司一拝の後、本殿の扉が開けられ、柿の葉を口にくわえた氏子代表の方々が次々に神饌を献上されました。

宮司による祝詞奏上の後、芸能の奉納です。今年は女性8名でグアム島のチャモロダンスが舞われました。チャモロの人々は、自然を敬い、八百万の神を信仰していたことから、日本の神道に通じるところがあるそうです。

県内外の神社から招かれた宮司等により玉串拝礼

いよいよお火焚きの始まりです。参詣者それぞれが、願い事を書いた祈祷串を手に列を作り、拝殿を通って階段を上り、本殿前に設けられた神火壇にくべて、本殿に祈ります。
残念ながら本殿前は撮影禁止です。
お火焚きの間、京都から招かれた名手による、美しい笛の音色が流れていました。

神火壇から立ち上る煙

11時半頃、室町時代の民衆芸能を起源とする「神降(かみくだち)の神事」が始まりました。拝殿から、赤天狗(猿田彦命)、宮司、祭神の一言主大神、お多福の4人が登場。赤天狗は腰に太刀、右手に金剛杖を持ち、一言主大神は御幣を打ち振り、お多福は両手で鈴をならし、宮司は色とりどりの紙ふぶきをまき散らしながら、皆の願い事が叶うよう祈願して、参詣者の間を練り歩きました。
この時つかんだ紙ふぶき、しっかり財布の中に納めています。願い事は他言無用だそうですが。
私たちはここで神社を後にしたのですが、この後、参拝者全員にお神酒と紅白饅頭の授与があったそうです。

文・写真 保存継承グループ 大谷巳弥子