まほろば歳時記
1月 鬼はしり
五條市大津町の陀々堂では、毎年1月14日に「鬼はしり」が行なわれます。父と母、子の三人の鬼が、燃え盛る巨大松明を堂内で差し上げる火祭りです。午後4時からは松明に点火しない昼の部、午後9時からの「鬼はしり」で松明に点火されます。春をよび、福を祈る陀々堂の「鬼はしり」行事は、国が指定する重要無形民俗文化財です。五條市総合体育館に臨時の駐車場が設けられ、送迎車が用意されますので便利に拝観できます。(雑賀耕三郎)
2月 子出来オンダ
川西町保田(ほた)・六県(むつがた)神社の子出来オンダは、2月11日(祝日)に行われます。田仕事の夫に弁当を届ける妊婦が突然出産する所作があり、豊作を子孫繁栄で予祝するオンダ祭です。厄年の男性が妊婦役を務めますが、その演技が笑いをよび、称賛の声も沸き上がります。オンダを終えると大和の村々は、播種・田植えの準備が始まります。(雑賀耕三郎)
3月 安倍文殊院の文殊お会式
3月25日~26日、文殊お会式(えしき)で安倍文殊院(桜井市)の境内は賑わいます。本堂 前には「智恵のお授け所」が設けられ、参拝者の頭に智恵袋を当てる加持祈祷が行われ ます。智恵がたくさん授かれるように、この時ばかりは子供たちも真剣に頭を下げてい ます。(雑賀耕三郎)
4月 馬見丘陵公園のチューリップ
古墳が点在する馬見丘陵公園は、どの季節に訪れても美しい花々が迎えてくれます。とりわけチューリップの華やかさには、入園者はみな驚きの歓声をあげます。「馬見チューリップフェア」は4月6日(土)~14日(日)に開催されます。(雑賀耕三郎)
5月 三輪山のふもとの小麦畑
麦の収穫期は初夏の5月から6月です。この時期が麦にとっての「実りの秋」で、麦秋(ばくしゅう)は初夏の季語となりました。黄金色と言えば稲穂ですが、小麦の黄金色はもう一つ深みがあるように感じます。奈良盆地の小麦は三輪山のふもとの桜井市内で集中的に栽培されています。この麦が三輪そうめんの傑作を産み出しました。(雑賀耕三郎)
6月 鹿苑の子鹿公開
奈良の鹿愛護会は春日大社境内地の鹿苑で、「子鹿公開」を6月に行います。鹿の出産シーズンを前に、お母さん鹿は鹿苑に保護されています。そちらで生まれた子鹿が順次公開されます。愛らしい子鹿のしぐさ、心配そうに見守る母鹿の姿に和みます。ぜひお出かけください。(雑賀耕三郎)
7月 小夫(おおぶ)の除蝗祭(じょこうさい)
小夫(桜井市東部の山中)の天神社は、7月22日に除蝗祭(じょこうさい)を執り行います。イナゴの害を取り除く祈祷が行われ、祭祀道具の虫干し、日干しで境内は満艦飾となります。田植えを終えると虫の害を心配し、風水害をおそれ、疫病の根絶を祈る行事が各地で行われます。(雑賀耕三郎)
8月 十津川の大踊り
8月の十津川村は盆踊り一色。なかでも13日の小原、14日の武蔵、15日の西川の大踊りは国の重要無形民俗文化財に指定されています。ヤグラを前に太鼓を持つ男たち、扇をもって並ぶ女性、その外には美しい吊り灯篭が並びます。太鼓が激しく叩かれ、扇が舞い、吊り灯篭は大きく振り回されます。この時ばかりと音頭取りは力をこめて歌い上げていきます。十津川の大踊りは中世の風流踊りの流れを引くものです。(雑賀耕三郎)
9月 東大寺二月堂 十七夜盆踊り
9月17日、東大寺二月堂では「十七夜の法要」と「十七夜盆踊り」が開催されます。旧暦の8月17日に観音さまの日として法要が行われてきましたが、それを引き継いだ「十七夜盆踊り」です。二月堂の釣り灯篭や行燈にも灯が入り、華やか、賑やかに踊りが奉納されます。この踊りは「盆踊りの踊り納め」とされ、数多くの踊り好きが集まります。法要は午後6時、盆踊りは午後6時30分から始まります。(雑賀耕三郎)
10月 藤原宮跡のコスモス
藤原宮跡のお花畑が評判です。大和三山を背景に春は菜の花、夏はキバナコスモスやハナハス、そして秋には300万本のコスモスが咲き乱れます。透明な秋の光の中、風にそよぐピンクや紫のコスモスの美しさはたとえようもありません。宮跡の東には奈良文化財研究所の「藤原宮跡資料室」、西側には「橿原市藤原京資料室」が開かれ、藤原京と宮を理解できる豊富な資料が展示されています。いずれも料金は無料です。(雑賀耕三郎)
11月 吐山の太鼓踊り
吐山(奈良市)の太鼓踊りは、もともとは雨乞いの時に奉納されていました。平成19年からは11月23日の下部(おりべ)神社の秋祭で、毎年奉納されることになります。各集落による「吐山太鼓踊り保存会」によって太鼓が打たれ、練習を重ねた男女の小学生もいっしょに参加します。奈良県無形民俗文化財の指定を受けています。(雑賀耕三郎)
12月 生駒山宝山寺 大鳥居大注連縄奉納
生駒聖天として知られる宝山寺は、毎年12月16日に大鳥居の注連縄を掛け替えます。宝山寺青年会が作る注連縄は長さが7m、重さが450㎏もあり、数多くの参詣者も参加して吊り上げられます。大注連縄の奉納を終えると、お正月は目の前、新しい年への期待が高まっていきます。(雑賀耕三郎)