まほろば歳時記
1月 橿原神宮の大絵馬
橿原神宮の境内には、高さ4.5メートル、幅5.4メートルの大絵馬が掲げられています。昨年11月末に、今年の干支である「辰」に掛け替えられました。橿原神宮は内拝殿と外拝殿から成る二重の拝殿を備えており、大絵馬は参拝者を迎える外拝殿前に配置されています。初詣の際には、絶好の撮影スポットとして多くの人で賑わいます。(礒兼 史洋)
2月 廣瀬大社の砂かけ祭
水神を祀る神社として古くから信仰されてきた廣瀬大社。五穀豊穣を願って行われる「お田植祭」は、雨に見立てた砂をかけ合うことから「砂かけ祭」と呼ばれています。白装束の田人や黒装束の牛役が、合図とともに境内の砂を猛然とかけ始め、参拝者も負けじとそれに応戦。祭りは大いに盛り上がります。砂まみれになること必至なので、参加の際は完全防備が必要です。(礒兼 史洋)
3月 壷阪寺の大雛曼荼羅
桃の節句に合わせて、壺阪寺では全国から奉納された雛人形を展示する「大雛曼荼羅」が行われます。人形の数は年々増えて、今年は過去最多の約4,000体が会場に飾られます。礼堂では、ご本尊を囲むように雛人形が配置され、この時期ならではの参拝が味わえます。また、雛人形の中には時事ネタを取り入れたユニークなものもあり、それを見つけることも楽しみのひとつです。(礒兼 史洋)
4月 奈良女子大学
100年以上の歴史を持つ「奈良女子大学」。日本に2校しかない国立の女子大学のひとつです。シンボル的な存在である記念館は、白地に若葉色のコントラストが美しく、守衛室および正門とともに重要文化財に指定されています。他にも、天皇ゆかりの奉安殿や、創立当時に購入された100年ピアノなど、貴重な文化的遺産が今日まで受け継がれています。(礒兼 史洋)
5月 霊山寺のバラ
霊山寺の境内には、春と秋に約200種2000株のバラが咲き誇る「バラ庭園」があります。戦争を体験した当時の住職が、平和の大切さを知ってほしいと願い、昭和32年に開園されました。園内は、バラのゲートやハート型の装飾など、造園技術を駆使した様々な工夫が施されています。また、バラを眺めながらくつろげるティーテラスもおすすめです。(礒兼 史洋)
6月 唐招提寺開山御廟の苔庭
唐招提寺境内の奥まった場所に、鑑真和上が眠る「開山御廟」があります。その門をくぐると、参道の両側に鮮やかな緑の風景が広がります。木立の間に佇む苔庭です。木漏れ日が注ぐ晴れの日は明暗のコントラストが美しく、雨の日は緑が一層深まり、幻想的な雰囲気が漂います。墓所という神聖な場所と見事に調和した、心癒される空間となっています。(礒兼 史洋)
7月 鹿だまり
夏の夕方、奈良国立博物館前にたくさんの鹿が集まる現象が見られます。「鹿だまり」と呼ばれる光景です。多い時には数百頭の鹿が集結することもありましたが、ここ数年は分散され、奈良公園内の他の場所でも集まる姿が見られるようになりました。鹿たちが集団でくつろぐ様子は、奈良らしい夏の風物詩として今年も観光客の視線を集めることでしょう。(礒兼 史洋)
8月 平城宮跡のツバメのねぐら入り
夏の時期、平城宮跡ではツバメが集団で夜を過ごす「ツバメのねぐら入り」を見ることができます。日没前から集まり始めるツバメは、次第に数を増し、やがて空を覆い尽くすほどの大群となります。その後、群れをなして旋回しながら、ヨシ原のねぐらへと一斉に舞い降りるのです。ツバメたちが毎年戻ってこられるよう、平城宮跡では保全活動も行われています。(礒兼 史洋)
9月 白毫寺の萩
萩は秋を彩る花として、万葉集で最も多く詠まれた植物です。萩の名所として知られる「白毫寺」では、秋の訪れとともに赤紫色や白色の萩の花が境内に咲きます。山門から続く参道は「萩の階段」とも呼ばれ、両脇に植えられた萩が石段を覆うように咲き誇ります。また、高台に位置する白毫寺の境内は、奈良市街を一望できる絶景スポットです。(礒兼 史洋)
10月 奈良豆比古神社の翁舞
奈良豆比古神社の「翁舞」は能楽の源流とされ、その貴重さから国の重要無形民俗文化財に指定されています。特に、三人の翁が舞う三人舞や、三番叟(さんばそう)と千歳(せんざい)による問答が特徴です。お囃子も独特の趣きがあり、ゆったりとした発声が印象に残ります。また、奈良豆比古神社には、樹齢1000年を超える楠の巨木や、復元された高札場など、多くの見どころが存在します。(礒兼 史洋)
11月 水谷(みずや)茶屋の紅葉
春日大社から若草山へと続く道沿いにある「水谷茶屋」は、秋になると絶好の紅葉スポットとして人気を集めます。趣のある茅葺き屋根や、時折姿を見せる鹿と共に紅葉を撮影できることがその魅力です。営業時間には赤い野点傘と縁台が設置され、茶店の雰囲気が一層引き立ちます。また、店内には昔ながらの囲炉裏や和紙行燈があり、季節の甘味やうどんなどが提供されています。(礒兼 史洋)
12月 日本聖公会 奈良基督(キリスト)教会
「奈良基督教会」は、近鉄奈良駅から南へのびる東向商店街の途中にあります。奈良の街並みに調和するよう設計された教会堂は、貴重な近代和風建築として、正門や会堂の家具、隣接する幼稚園舎とともに重要文化財に指定されています。七宝焼の技法を用いた祭壇の十字架や、鳩がモチーフされた洗礼盤など、和洋が融合した内外装の意匠が見どころです。(礒兼 史洋)