まほろば歳時記

1月 若草山焼き行事
「若草山焼き行事」は、冬の奈良を彩る伝統行事です。使用される御神火は「春日の大とんど」から採火され、聖火行列とともに若草山へと運ばれます。興福寺、東大寺、春日大社の僧侶や神職が金峯山寺の法螺貝の音に先導されて進む行列は、神仏習合の面影を感じさせます。そして、奈良県内でも最大級とされる大花火が打ち上げられた後、消防団員が草地に一斉点火。若草山全体が炎に包まれていくのです。(礒兼 史洋)

2月 竹の寒干し
冬になると、生駒市高山地区では、竹を円錐状に組んで天日干しをする「竹の寒干し」が行われます。寒気にさらして水分を抜くことで、竹本来の風合いを引き出すためです。この竹を材料に作られる「高山茶筌」は、国産のシェア90%以上を誇り、国の伝統的工芸品にも指定されています。近年、海外での抹茶人気が広がりをみせており、高品質な茶筌にも注目が集まっています。(礒兼 史洋)

3月 高取城下 町家のひな祭り
高取町で昨年まで行われていた「町家の雛めぐり」が、今年から「高取城下 町家のひな祭り」として新たにスタートしました。これまで同様、土佐街道沿いの町家や商店には雛人形が飾られ、メイン会場では500体17段におよぶ「天段の雛」が展示されます。さらに、新設された「高取雛の資料館」には、歴史ある貴重な雛人形が公開されており、新たな見どころとして注目です。また、約4500体を飾る「大雛曼荼羅」が、壺阪寺にて同時開催されています。(礒兼 史洋)

4月 又兵衛桜(本郷の瀧桜)
「又兵衛桜」は宇陀市本郷にある枝垂れ桜です。戦国武将・後藤又兵衛がこの地で生き延びたという伝説と、後藤家の屋敷跡に位置することから、この名が付けられました。樹齢は約300年、高さは13メートルに及び、滝のように流れ落ちる枝ぶりから「瀧桜」とも呼ばれています。見頃の時期には、周囲に桃の花、水仙、菜の花が咲き誇り、春ならではの華やかな風景が楽しめます。(礒兼 史洋)