葛城古道 ― 神話と豪族の古里を歩く
今日11月27日(日)、交流部会の歴史地理サークルの第2回目のハイキングが実施された。近鉄御所(ごせ)駅に集結した13名は、日本一長い路線の新宮行き特急バスにちょっと乗車して、天誅組の義士が駆けた風の森で下車。
夕雲の 所絶えをいづる 月を見む 風の森こそ 近づきにけり
(天誅組記録方、伴林光平)
これより鴨族の発祥の地であり、全国の鴨神社の総社である「高鴨神社」へ向かう。ここ鴨神の地の鴨族はやがて山城・安芸・三河などへ分派して行き、それぞれの土地で鴨族の神を祀る(京都・下賀茂神社の祭神、鴨建津身命)。
この神社の本殿は室町時代の1543年に再建された重文である。また江戸時代から栽培された日本サクラ草が有名で、4月下旬から5月上旬に訪れるのも良いだろう。
紅葉の神話の里・伏見から高天原と進み、桧や杉の木立の急な坂道を登り、ひと汗かいたところで「高天彦神社」の参道の樹齢数百年の古杉が迎えてくれた。この神社は、太古から神々の住む高天の大地に鎮座して、背後には美しい円錐状のご神体である白雲の峯がそびえている。
葛城族の崇拝した祭神の高御産巣日神は、最初に現れた三柱の神の一人で、天孫降臨を指揮した神である。ここ高天の台地こそ日本人の心の古里「高天原」であると社伝は記す。
ここから少し歩いたところに行基が開基の「高天寺橋本院」の境内、瞑想の庭で昼食をとった。その後、近畿自然歩道の林間を駇け下り、951年村上天皇の御代に興福寺の名僧一和僧都の開基の浄土宗「極楽寺」に着く。
さらに柿畑の坂道を下り、幻の柿と言われる御所柿の味を想像しながら長柄の町並みに入る。御所市で最古の建物の重文・中村家住宅、安政の大獄で獄中死した六物空満所縁の龍正寺、下照姫命(姫の宮)の長柄神社を見て歩いた。
そうするうちに「葛城一言主神社」境内の樹齢約1200年の大イチヨウの黄葉が目に入った。まだ落葉がなく黄色いじゅうたんに至っていなかった。
葛城一言主神社をあとにして、楢原氏の氏寺である「九品寺」へと歩を進める。
この辺りから真東の桜井方面の音羽山(851m)、経ヶ塚山(889m)、熊ヶ岳(904m)の山々を眺望できる。番水の時計から夕映えの六地蔵石仏までたどり着き一路近鉄御所駅へと元気に歩く。歩行距離約13Kmを平成の猿田彦(田原敏明さん)、八咫烏(藤本一典さん)の記紀万葉やクイズありの名ガイドにより、誰ひとり神隠しに会わず無事に全行程を終えた。
奈良まほろばソムリエ友の会 交流部会 歴史地理サークル 栗栖勲