保存・継承グループ主催講演会 -「お水取り」音を観る-
講師 東大寺教学執事 上司永照(かみつかさえいしょう)氏
場所 サンワシティ西大寺にて
日時 11月12日(火) 13:30~15:30
参加者 53名
<講演会要旨>
1.忍土について
われわれが普段生活しているのは、仏教用語でいう「忍土(にんど)」つまり、「娑婆(しゃば)」の世界であり、苦しみが多く、忍耐すべき世界である。
2.別火とは
修二会は1か月近くに及ぶ長期の行事であるが、大まかには2月20日から28日までの前行と、3月1日から14日までの本行に分かれる。前行は「別火」と呼ばれ、練行衆が普段の生活を断ち切って精進潔斎し、次第に心身を浄めていく期間のこと。そこで使う火は特別に起こした火を使う。
明治以前は普段の生活でも所謂ストーブ等の暖房のない、火の気のない生活が一般的であった。生活面では江戸時代と鎌倉時代とはあまり変わりがなかったようだ。別火ではそういう厳しい環境で行われる。
3.練行衆の発表
毎年12月16日の良弁僧正開山忌の時に連行衆の配役の発表がある。
元々は多衆であったが、現在は11名(四職と平衆七人)。
・和上(わじょう) 授戒する人
・大導師(だいどうし) 行法全体のリーダー
・咒師(しゅし) 道場の結界をする
・堂司(どうつかさ) 堂内の荘厳と行法の進行
・平衆(ひらしゅう) 北衆之一、南衆之一、北衆之二、南衆之二、中灯之一、権処世界、処世界
4.本行
本行は3月1日から7日までが上7日、8日から14日までが下7日と呼ばれる。一日は「六時の行法」といわれ、日中、日没、初夜、半夜、後夜、晨朝の六時に分けられる。
5.名前の永照は師匠である清水公照さんから一字を頂いた。
6.修二会のおこりについて
修二会は東大寺の開山良弁僧正の高弟であった実忠和尚(じっちゅうかしょう)が天平勝宝4年(752)に始めたもので、大仏開眼の年に当たる。
和尚は「十一面悔過」法要を営まれ一千二百有余年一度も休むことなく、現在まで続けられている。途中、1180年の平重衡の乱入で東大寺が焼けた時、当時の管長は修二会の中止を言ったが、15人の僧によって実施された。
7.お水取りの結論
お水取りは詰まる所、春を迎える行事であり、「風雨順時」季節が季節通りにやってくることの有難さや春を待望する気持ちの表れである。
8.新入について
初めて行に参加する人のこと。一つだけ声明を覚え3月3日の初夜に披露する。
9.法螺貝の練習
師走貝といい、尾切りと小鷹のサイズ別の法螺貝がある。
10.神名帳の奉読
講演の最後に「神名帳」の奉読の熱演が約15分実施された。独特の節回しと、鍛えられた声の迫力に会場の全員が圧倒され、大感動を覚えた。
以上
なお、次回は同テーマで12月10日(火)、場所も時間も同じ。
(亀田 記)