勉強会「会津八一と奈良」第3回目(最終回)報告

「奈良県下の歌碑」会津八一の感性でみた奈良

日時:11月12日18:30~20:30(懇親会含む)
場所:南都銀行西大寺銀行クラブ
出席人数22人
講師:奈良大学名誉教授浅田隆先生
奈良県下には会津八一自筆の歌碑が19を数え、他に採字といわれる手法で自筆の書から合成されてつくられた歌碑が3碑ほどある。

春日大社 神苑 昭和18年秋
かすがのに おしてるつきの ほがらかに
あきのゆうべと なりにけるかも

この歌は、南京新唱の巻頭歌である。古都の秋の月夜を平易に調べ豊かに歌いあげる。奈良への第一歩を古調で歌うこの一首は、巻頭歌としてとてもふさわしい。歌碑としては、県下に2番目に建立されたものである。おおらかにゆったりとした調べに誘われて、心静かに奈良の風物と八一ワールドに入っていくことが出来る。

唐招提寺 昭和25年 中秋
おほてらの まろきはしらの つきかげを
つちにふみつつ ものこそおもへ

おほてらの~というフレーズは会津さんが、法隆寺滞在時より口ずさんでおられたようで、唐招提寺だけでなく法隆寺への想いも入っているのではないかという創作秘話を浅田先生より伺った。このようなエピソードを聴いて、再びこの有名な歌に想いを馳せる事が出来るのもこのまた、格別である。
会津さんは法隆寺に対しても強い憧憬がありながら、法隆寺再建説を支持していたため、当時の法隆寺からは疎んじられ、永年歌碑建立を拒絶されていた。
法隆寺に会津さんの歌碑が立つのは平成24年になってからである。
19の歌碑について、詳しく解説いただいた。建立順に並べると、①新薬師寺②春日大社万葉植物園③唐招提寺④東大寺⑤法輪寺⑥法華寺⑦秋篠寺⑧海龍王寺⑨般若時⑩⑫日吉館⑪斑鳩 原家⑬猿沢池畔⑭薬師寺⑮興福寺⑯喜光寺⑰中宮寺⑱法隆寺⑲上宮遺跡公園となる。
本日は最終回であり、恒例の懇親会が開催された。
徒歩でも南は薬師寺を終点にすれば、廻れる工程でもある。(自転車ならすべて一日で廻る事が出来る。)当会で「会津八一の歌碑めぐりツアー」を企画しようという事など、皆さん熱心に話し合われていた。

(岸 克行 記)