女性グループ(ソムリエンヌ)活動報告「馬見古墳群―いまむかしー」

11月20日(日)馬見丘陵公園と周辺の古墳を訪ねました。テーマは「馬見古墳群―いまむかしー」。 馬見丘陵公園内外で代表的な古墳を測量図や出土写真・整備中の写真などの資料を元に、過去と現在の古墳の状況を見比べながらの散策でした。
馬見古墳群は、佐紀盾列古墳群、大和柳本古墳群に並ぶ大型古墳群。南部、中央部、北部に分かれ、馬見丘陵公園として整備されている中央部には特別史跡の巣山古墳をはじめとする前方後円墳、大型横穴式石室をもつ大円墳の牧野古墳など大小150もの古墳が集中している。古代には牧として、また古墳として利用されてきたが、長らく天皇家の墓域と考えられて来なかった。幕末の「文久の修陵」事業が行われた際にも馬見古墳群は見落とされていた。明治時代に「大和国古墳墓取調帳」で馬見丘陵内の70基の古墳が取り上げられたが、本格的な調査は昭和に入ってからであったため馬見の古墳は自由に立ち入れた。そこを民有地に、住宅地へと開発された。丘陵近くの約300haがニュータウンとして開発されることとなるが、古墳の破壊を恐れた地元有志の保存運動で多くの古墳が救われた。現在その約65haは馬見丘陵公園として保存されている。

ニュータウン開発前・昭和39年頃
施行後・昭和62年頃

すさまじい勢いで開発が進んだ様子が判ります。
平成3年に開園した馬見丘陵公園内では様々な古墳が見学できます。国の特別史跡や史跡に指定されているもの、復元整備されているもの、芝生を植えて整備されているもの、位置や形状がわかるように整備されたもの、自然のまま保存されているものなど、バラエティーに富んでいます。

佐味田石塚古墳

馬見丘陵公園中央入口付近の県道工事の際に発見され、公園内に移築保存されている竪穴式石室です。草むらにいくつか埋もれているので見つけてみてください。

ナガレ山古墳

土取り工事で墳丘の1/4が破壊されましたが、国史跡となり公有地化もされ保存が図られました。ナガレ山古墳の保存とあわせて、馬見丘陵公園の構想が出来上がったそうです。
墳丘東半分が築造当時の姿、西半分は長い年月を経て小山になった姿を表現しています。

円筒埴輪

ナガレ山古墳に並べられた埴輪に〇や△、□などの窓があります。どんな意味があるのでしょうか。焼成しやすくするため、たまった雨水を外へ出すための穴など諸説あるようですが、△は魔除けを意味すると寺田さんから説明がありました。すると西川さんから帯や着物の長襦袢の織柄に『三角のウロコ柄』というものがあり、嫁入り道具のひとつだそうで、こちらは『厄除け』を意味するのだそうです。埴輪の三角と着物の三角の織り柄、古来より受け継がれた共通性を感じるような興味深い話題で盛り上がりました。

別所下古墳付近、上池の紅葉風景

馬見丘陵公園内は四季折々の自然がいっぱいで、この日は紅葉がとてもきれいでした。

皇帝ダリア

昼食はダリア園(彩りの広場)でした。草丈4m~5mもの高さになる皇帝ダリアは11月下旬から咲き始め、霜が降りる12月中旬まで楽しめるそうです。

佐味田狐塚古墳

この古墳については特に興味深く説明に聞き入る。墳丘図面で確認すると縦軸に陸橋が重なっている。

陸橋で繋がれた、前方部と後円部

町道の建設時に発見されるが、すでに計画道路は墳丘の裾まで迫っており結局道路によって後円部が寸断された。後円部は公園中央エリアに、前方部は南エリアに位置し陸橋で繋がれています。

道路の緑のラインが古墳の位置を示す
昭和2年頃の巣山古墳

かつて、墳丘に住宅が数件建っていたそうです。2000年以降、整備のための発掘調査が続けられており、しばしば話題となりましたが、これまで津堂城山古墳しか例のなかった出島状遺構が発見され、そこから水鳥埴輪をはじめ、家形、柵形、蓋形などの形象埴輪が数多く出土しています。また周濠から柱材、板材とともに古代の霊柩船と思われる船の部材が壊して置かれた状態で出土しています。わざわざ壊すという行為は、この世からあの世へ旅立つ者が、この世に戻ってはいけないという意味があるのでは?生前に故人が使っていたお茶碗を葬式で割る風習に通じるような儀式のひとつではないか?と、寺田さんからそんな話題も出ました。
三吉2号墳、タダヲシ古墳を見学後、公園外へ移動。佐味田宝塚古墳―牧野古墳―石ヶ谷古墳を巡ります。

牧野古墳・石室内部見学
刳抜式家形石棺・広陵古文化会より供えられる卒塔婆

広陵町ボランティアガイドの方に石室内部の説明をして頂きました。石舞台古墳の石室に匹敵する大きさに圧倒されます。築造時期は6世紀末から7世紀頃、馬見古墳群が造られなくなった時代とみられています。ここで寺田さんから古墳クイズが出題されました。問題:古墳の石室を造る際、基準となる石材があります。牧野古墳の場合はどれが最初に置かれた基準石か?など、古墳ネタで盛り上がります。研究者は石室を見ればどの石が基準石なのか解るのだそうです。驚き!

牧野古墳にて記念撮影

本日の参加者5名。歩行距離約10km、参加者の清水さんの万歩計は22211歩を示していたそうで驚きでした。アップダウンの少ないコースだったせいでしょうか、心地よい疲れに今夜はよく眠れそうだと笑って解散。案内して頂いた寺田さんありがとうございました。

文・写真 女性グループ(ソムリエンヌ) 道崎 美幸