ふれあい交流会 フン虫王子がやってきた!

7月15日(月・祝)ソムリエの会第3回ふれあい交流会講座が南都銀行西大寺銀行クラブで行われました。今回の講師は「ならまち糞虫館」代表のフン虫王子こと中村圭一さん。「糞虫の聖地!奈良公園の魅力」と題して和気あいあいとした楽しい講座でしたので、ご報告させていただきます。

館長のプロフィールと「ならまち糞虫館」設立物語
子どもの頃から虫が大好き!いつも下を向いて地面に何か虫はいないかと木の枝でひっくり返す好奇心いっぱいの少年だった中村さん。中学時代に糞虫の存在を知り、奈良公園でルリセンチコガネに出会いその輝く姿に魅せられてしまいます。なんと中学高校生の公募コンクール「日本学生科学賞」の県知事賞を受賞!その後、大人になって糞虫観察のため世界にまで出かける一方、金融機関の東京勤務が続きます。
「好きなこと、ワクワクすることをやりたいな。何か新しい挑戦を!」と仕事を辞めて、新たな世界へ飛び出します。地元奈良に戻り、空き家の町屋のモデルケースに応募すると「面白い!」と採用。夢が一気に実現したそうです。
しかし、「空き家といっても、まわりの環境は昭和レトロ。内装を知り合いのデザイナーにお願いして、(ただ虫を並べるのではなく)オシャレなジュエリーショップのような展示にしてもらいました。」と中村さん。まるでギャラリーみたいな斬新なデザイン!「こんな糞虫館は、日本でここだけです。」と。
そしてさまざまなメディアに取り上げられ大きな話題になっていきます。「日経新聞の『私の履歴書』の横にある文化欄にまで載って『場違い‼』と思いました(笑)」と中村さん。
奈良公園と鹿
「今は鹿活!鹿と美しい奈良公園の景色を撮ってインスタに上げるのが流行です。」「奈良といえば、1に大仏、2に鹿、3にフン虫‼ 大ブレークしますよ(笑)これ最先端ですから。」と笑いながらも真顔でおっしゃる中村さん。
奈良公園は「糞虫の聖地」として専門家の間では、とっても有名だそうです。「環境が守られていないと糞虫は生きていけない。ここは彼らにとって住み心地良いから、糞虫の聖地なのです。」と。そして、日本の三大「糞虫の聖地」(広島県宮島と宮城県金華山とここ奈良公園の三つ)を紹介して下さいました。
「一日約1トンの鹿の糞が奈良公園にばら撒かれ、それを糞虫が処理をしてくれます。彼らが鹿の糞をバラバラに粉砕して土に還してくれるお陰で(微生物も作用して芝生の養分となり)美しい芝生、緑は守られるのです」と。
(あとでお聞きしたら、「もしも人を雇ってフンを拾い集めたらそれだけで23億円!その上、芝刈り機を買って、設備投資をして、フンを処理して肥料に還元すると、毎年100億円ほど費用がかかる」とのことなのです。なんてすごいフン虫たち‼)
では、糞虫とは?
一般的には、糞を食べるコガネムシの仲間で、日本に約160種生息。奈良はその内59種が確認されていて、一年中観測できるそうです。「でも、実は日本にいる99%はフンを転がさないのです。しかし!1%は、フンを転がします!」「1%ここ大事‼ソムリエの方ならここは押さえて‼(笑)」とユーモアたっぷり。
糞虫の四季
「春はフン虫のメスを求めてオスが歩き回り発見しやすいんですよ。」と中村さん。「一日中ずっと座って見ているといろいろとわかるんですよ」と。(一日中待つって、中村さんそこがすごいんですけど)
「でも夏は見つけにくいんです。夏は親が死んで数が減るし、暑いと土中にもぐります。基本、一年しか生きないのです」と。
「秋は生まれたてのピカピカ!」そして5本角のまるでカブトムシのようなゴホンダイコクコガネのことを話され、「かっこいいでしょ」と自慢気な中村さん。
「冬にもフンを食べる種類がいます」と四季それぞれの様子を紹介して下さいました。
奈良特産のルリセンチコガネ
実は、ルリセンチコガネというのは、種名は「オオセンチコガネ」。地域によって色の差があるらしく、ここ奈良で生息するのは色がなんとも美しい「ルリ色のオオセンチコガネ」。これが奈良でしか見ることができないために「ルリセンチコガネ」と呼ばれています。(奈良だけがルリ色だなんて素敵ですね!)
そして糞虫たちの約半分がマクソコガネの仲間で、一年中生息し、奈良公園の鹿のフンをきれいに食べてくれます。
「皆さんご存じでしたか?『奈良市の環境キャラクターになったのは何でしょう?』・・・正解は『奈良が世界に誇るルリ君‼なのです~!』」(マニアック~‼)
そのルリセンチコガネの繁殖は、一つの穴に一個のたまご。地下で食事とエアコンつきで、湿度も調整してくれますからね~」と。
多種多様なマクソコガネの仲間を紹介
犬のフンじゃないと嫌だというセマダラマグソコガネ、牛糞等が好きなマグソコガネ、フンを食べない糞虫、とっても小さいヒメツツマグソコガネは奈良でしかなかなか見つけられないレアな糞虫Saprosites narae (なんと学名の中に「奈良」が入ってる!)等々
世界の糞虫
美しい糞虫や牛糞に埋もれかけたオーストラリアを救ったといわれる糞虫の話等アフリカやアジア等世界中で活躍(⁉)する糞虫も紹介されました。
ファーブル昆虫記のフンコロガシ
ファーブル昆虫記に出てくるスカラ・サクレはフランスにはおらず、「ファーブルさんは実際にはスカラベティフォンを観察していたのでは?」と中村さん。しっかりと「エジプトのフンコロガシを奈良公園で飼ってみる」という実験もされて成功しています。
古代エジプトの太陽神のフンコロガシ
古代エジプトの権力者は、スカラベ(フンコロガシ)を神の使いと重ね合わせていたかもしれない(フンの玉を転がし大きな球体を作るスカラベの習性を神秘的なものと考え、その球体を太陽に見立て、スカラベを太陽の運行を司る神と同一視)というから驚きです。スカラベを模した装飾品まであって出土しているとか!
(ちなみに日本にスカラベの仲間はいないようです。)
大丈夫か?奈良公園
鹿が草を次々と食べてしまい、春日山原始林は最近木が育ってきていないとか。
また、ナラ枯れという現象も起きているそうです。体に菌がついた木食い虫が大量発生。水は不足するし、止められない虫の増殖!
また、芝生は勝手に育つとボサボサになってしまいます。鹿が芝生を食べては踏みを繰り返し、観光客も増えて踏みつけられてしまうので、禿げてしまうそうです。いろいろ問題があり、奈良の自然、奈良公園をどう守っていくかも考えなくてはならないと問題提起もされていました。そして、中村さんは、一人でも多くの方に奈良公園の小さな糞虫の大きな存在を知ってもらい、魅力を感じてほしいと活動を続けておられます。
こよなく糞虫を愛し研究し続ける中村圭一さん。なんとも楽しそうに少年のように目を輝かせて糞虫を語るお姿を見ていると、これは奈良の新名所になるかも!とうなずいてしまいます。大ブレークする前に糞虫館に一度足を運び(土日13:00-18:00のみオープン・奈良市南城戸町)新しい世界を旅してみるのも面白いかも!行ってみなくちゃ!と思われた方も多かったのでは。久々の「ふれあい交流会」は女性も多く賑やかに終わりました。

広報G 文:増田優子 写真:鉄田憲男