サクサクわかる万葉講座!第3回「万葉人の暮らし」
山﨑愛子さん
10月26日(土)、新大宮南都商事5階において、第3回サクサクわかる万葉講座が行われました。今回の講師は、奈良を愛するあまり奈良に引っ越して来られたという山﨑さん。ガイドでも講師でもご活躍で、今回は初心者にもわかりやすい「万葉人の暮らし」のお話をして下さいました。
まずは大自然のなかで、農耕を営んできた古代の人は四季の変化に敏感であったというところから。奈良時代には、万葉集でも季節の歌が盛んに詠まれたことをご解説。
春のところでは、特に大伴家持のことを詳しくお話され、家持が佐保にあった自邸で詠んだ彼の代表作『春愁三首』『絶唱三首』「春の野に霞たなびきうら悲し この夕かげに鶯鳴くも」などを紹介されました。
そして、「美しい春であるのに、悲しい気持ちになる。現代人である私達にも通じる感情です」と話されていました。
また、山﨑さんは、「小学校の時の学校の取り組みが、小3から始まって、小5で百人一首を全て覚えました。その時に覚えたことが、今から思えば良かったです。」とおっしゃっていました。そして、万葉人が親しんだ鳥や身近な動物のこともご紹介。
秋は、山上憶良の秋の七草の歌を読まれました。七つの草を詠んだ理由、漢語や仏典では、『七』を特別な数とすることや、めでたい喜びの数であったことなどご解説。そして秋と言えば、「月」。秋の夜を感傷的なものとして捉える感覚は、万葉集ではあまり例がないそうで、これは平安時代以降の古今集の頃からだそうです。月の満ち欠けと呼称を月の図を使って詳しく紹介されました。当時の人々は、太陰暦だったので、月の満ち欠けには敏感だったとか。「私達も月の形をもっと知っていれば面白いだろうなぁ」とおっしゃっていました。
また、大伴家持が因幡(島根県)の国司だった時の宴の歌「新しき 年の始めの 初春の 今日の降る雪の いや重け吉事」というこれからもおめでたい事が重なっていきますようにという歌をご紹介。『歳旦立春』元旦と立春が重なるおめでたい日の話もありました。
「万葉集の歌は、さまざまな場所で歌われているが、その多くが宴で歌われたと考えられている」とのこと。「宴はもともと神を迎え酒食をふるまい、もてなす場であった。曲水の宴、七夕の詩宴、天皇の行幸先での宴など、だんだんと酒食を楽しみ、歌をうたう場になっていった」などを解説されました。
また、山上憶良の家族を想う歌や庶民の貧しい暮らしぶりの歌もご紹介。家族の歌では「前書きに、『人が子を愛することは、お釈迦様もその例外ではなく、それが人の性であり、煩悩である』と書かれています」とのことで、子どもへの深い愛情があふれる二首「瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして思はゆ~」と、反歌の「銀も 金も玉も 何せむに 優れる宝 子に及かめやも」を紹介されました。また、食に関しても貴族、上級役人と下級役人の復元された食事の写真をご解説。
最後に、歌人別ランキングでまとめ、大伴家持が歌数では479首で圧倒的に多く、次いで柿本人麻呂、坂上郎女、山上憶良、大伴旅人らを紹介されましたが、作者未詳が約2000首もあることも強調され、「万葉人は、みんな歌人だった」と締め括られました。
万葉人の日常生活から宴の歌、恋の歌、家族愛の歌など四季のうつろいや月の満ち欠けを交えながら楽しく学ぶことができました。山﨑さん、ありがとうございました。
さて、いよいよこの『サクサクわかる万葉講座』も残すところあと2回です。無料で学べる何ともありがたい講座、なかなかこのような機会はありません。皆様どうぞこのチャンスを活かして万葉集をお楽しみ下さいませ。
写真:専務理事 鉄田憲男 文:広報G 増田優子