女性サークル(ソムリエンヌ)「安堵町灯芯ひき体験&うぶすなの郷のランチ」
9月3日、まだ残暑の厳しい日曜日にソムリエンヌのメンバー12名で安堵町のツアーに参加しました。今回の企画案内はメンバーの寺田さんでした。
まず、集合場所の法隆寺駅すぐ近くに残る、天理軽便鉄道の遺構を見学しました。大正4年(1915)から37年間、ここ新法隆寺駅と天理を繋いで運行していたそうです。水路の横に煉瓦の壁がわずかに当時の姿を残していました。
車2台に分乗して、「うぶすなの郷」に向かいました。ここは陶芸家、富本憲吉の生家を修築して公開されたものです。大和民家様式を取り入れて改築した重厚なお部屋で、ランチを頂きました。まず参加者の自己紹介から始まりました。今回初参加の方も迎え、いつもの和気あいあいとした雰囲気のお喋りと美味しいお食事で楽しいひと時を過ごしました。
ランチを頂いた後は、安堵町の散策に出発です。
まず、歩いて5分ほどの飽波神社に向かいました。御祭神は素戔嗚尊で、聖徳太子の創建と伝わります。境内には聖徳太子が飛鳥に向かう際に休んだと伝わる「太子の腰かけ石」があり、太子の人形が腰かけていました。また安堵総社と呼ばれ東・西安堵の氏神様だからでしょう、手水舎の鉢が東西の2個に分かれて並んでいるのも珍しかったです。飽波神社は雨乞いの「なもで踊り」が有名ですが、「なもで」は「南無阿弥陀仏」のことだと寺田さんに教えて貰いました。
太子道と西名阪自動車道が交差するところに高塚があります。かつては大きなセンダンの木がありましたが台風で倒れてしまったそうです。その株の根元に大石があり、聖徳太子のタカを埋めたとも、また、昔タカ狩りをした殿様のタカを埋めてタカ塚になったとも伝わっています。今は祠があり、中には浮彫の石仏が三体祀ってありました。光背部分の上に種字が薄く認められ、平越さんが「左の一体は如意輪観音さまのようです。」と教えて下さいました。
次に、案山子公園の大きな聖徳太子像を横に見ながら、中窪田の杵築神社に向かいました。寿永2年(1183)創建、昭和33年(1958)に大和川の河川改修で当地に移転したそうです。御祭神は素戔嗚尊です。参拝の後、寺田さんから「本殿にある黒地に白の模様を見て何か気付きませんか」と問いかけがあり、皆で考えました。どこかで見たような...。答えは春日大社若宮旧御本殿。この本殿は春日移しなのでした。由緒ある神社だったことが偲ばれます。
杵築神社から少し南に下った田んぼの中にポツンと木が立っており、その根元に五輪塔や宝篋印塔の残欠を積み上げて作った石塔がありました。地輪部の4面の銘文によると甲斐国の戦国大名武田信玄の家臣馬場美濃守信房の供養塔だそうです。信房は、長篠の戦いで戦死しましたが、その遺児脇之進信之が窪田村に流れ住み天正18年(1590)に五輪塔を建立したそうです。
最後に、灯芯ひきの体験ができる安堵町歴史民俗博物館を訪ねました。今村文吾、勤三、荒男の生家である旧今村家を、平成5年(1993)に修復して一般開放されました。ここで、館内を見学する組と灯芯ひきの体験組に分かれました。
館内には今村家に関する貴重な資料が展示されていました。今村文吾は村民に儒学や漢学を教え、後、天誅組に加わった伴林光平とも交流があったそうです。奈良県再設置運動を進めた今村勤三は文吾の甥にあたります。
安堵町の地は奈良盆地の中でも低い場所にあるため湿田が多く、江戸時代から昭和40年代まで稲の裏作として藺草が栽培されました。現在は資料館前の一画で栽培されています。藺草の表皮を引き裂き、取り出したズイの部分を「灯芯」と言い、灯明や和ろうそくの燃え芯として利用されました。この灯芯を取り出す技術「灯芯ひき」を体験させてもらいました。水に浸して戻した藺草から小刀を供えた「ひき台」と呼ばれる道具で芯をひき出します。ひき手の左手に「藺台」、正面に「灯芯置き台」を置いて藺草の先端を刀に差し、左手を刀に添え、右手で皮を引き裂きながら灯芯を引き出します。
こちらの灯芯保存会の皆様がボランティアで、東大寺修二会、法隆寺修正会、薬師寺花会式、元興寺地蔵盆に奉納されています。
博物館の方が最初に見本を見せて下さいました。みるみる数10cmの白い灯芯が引き出されていきます。しかし、自分で実際やってみるとブツブツちぎれてしまい、まるでベビースターラーメンのようでした。上達の早いメンバーは30cmほどの灯芯を引けるようになっていました。それぞれ自分でひいた灯芯を封筒に入れてもらい持ち帰りました。夜には早速メンバーの一人から、灯芯の暖かい明かりの写真が届きました。
今回も、神社の由緒を知り、見落としてしまいそうな史跡を回ることが出来、また灯芯ひきという貴重な体験も出来ました。次回もソムリエンヌの皆さんと楽しく充実した時間を過ごしたいと思います。
女性サークル(ソムリエンヌ) 文 森屋美穂子・寺田麻美 写真 森屋美穂子・藤岡栄子