感動!市町村指定文化財② 山田道安創建寺院の花と仏像達
奈良市東部の都祁馬場町には、山田道安ゆかりの寺「金龍寺」があります。国道369号線と布目川が交差する辺りの、小高い山の中腹に建っています。金龍寺は、松永久秀による戦乱で焼け落ちた東大寺大仏の胴体を修復したことで有名な山田道安が、都祁馬場の山城の西方に一宇を建立し、東大寺末寺としたのが起こりです。
江戸時代には無住になり、室町時代末期創建時の萱葺きの本堂は荒廃しました。昭和10年、元興寺(華厳宗 塔跡)の住職であった水野圭真師が当寺に入り、その荒廃を嘆き復興を発願して甥の池田圭中師と共に浄財を集め、その資金をもって山を削り境内を拡張し、同12年に新たに本堂を建てました。山を削ったため、本堂は上段に内陣、下段に外陣の2段となる珍しい構造となりました。内陣には窓が設けられており、外から光が入るため比較的明るい空間になっています。
上段の内陣には、3体の仏像がそれぞれ厨子に納められ安置されています。中央には、宝珠と錫杖を持ち左足を下に垂らす半跏踏み下げ坐の本尊「地蔵菩薩半跏像」が、その右隣には脇仏の「十一面観世音菩薩立像」(いずれも鎌倉時代作)が安置されています。また、本尊の左隣には、秘仏の聖観音菩薩立像(飛鳥時代作)が祀られていましたが、国の重要文化財の指定を受けた後、奈良国立博物館に寄託したため、江戸時代に作られた仏像が安置されています。
金龍寺を守っておられるのは池田圭俊長老です。当寺で生まれ育った池田長老は、父親の池田圭中師の後を継いで金龍寺の住職となり、平成15年からは元興寺(※参照)の住職も兼任して来られました。現在も元興寺の住職を務めておられます。なお、金龍寺の住職は、息子の池田圭誠師(今年の東大寺二月堂修二会(お水取り)の練行衆(北座衆之一)を務める)が継がれています。池田圭俊長老は、普段は金龍寺の庫裡で生活されておられますので、当寺に行けばいつでもご尊顔を拝することができます。
※ 現在、元興寺は「極楽坊(真言律宗)」「塔跡(華厳宗)」「小塔院(真言律宗)の三寺院があり、本文中の「元興寺」は「塔跡(華厳宗)」です。
金龍寺の境内の庭には、春から秋にかけていろいろな花々(水芭蕉、オオヤマレンゲ、スズランなど)が咲いて、訪れた人の目を楽しませてくれます。
池田長老は、境内に咲く花々を撮影した写真を参拝に来られた方に見せて、気さくに話しかけて下さいます。
池田長老は、日々、花々を慈しみ、大切に育てられておられます。長老の慈愛に守られた仏像や花々に接するだけでも心が和む、静かな山寺です。
(文・写真 保存継承グループ 本井良明)