保存継承グループ 秦楽寺(田原本町)で美化奉仕活動
保存継承グループは、6月14日(土)に社寺の美化奉仕活動を田原本町の秦楽寺(じんらくじ)で行いました。当日は、雨が降ったりやんだりの生憎の天気でしたが、当グループから12名、ソムリエの会から8名の合計20名が参加しました。

秦楽寺は、大化3(647)年に聖徳太子の家臣、秦河勝(はたのかわかつ)が創建したと伝えられ、平安時代には弘法大師が宿し、「三教指帰(さんごうしいき)」を著したとも伝えられる由緒ある寺で、真言律宗に属しています。表門は珍しい中国風造りの土蔵門で、表門を入ると右手に鐘楼があり、その向こうに本堂が見えます。本堂には、ご本尊の千手千眼観音菩薩像と脇侍の聖徳太子十六歳像、秦河勝坐像が安置されています。本堂の隣には、歓喜天を祀っている聖天堂があります。


また、境内には、梵字の「阿」をかたどった阿字池があり、満々と水をたたえ、蓮の葉が育っていました。寺伝によれば、弘法大師が「三教指帰」を執筆中、阿字池の蛙の鳴声が喧しかったので、これを叱ったところ、蛙の鳴声が止まったと言われています。



参加者は、午前9時35分に笠縫駅西口に集合して、徒歩(約5分)で秦楽寺に向かい、秦楽寺境内でマイカーなどの直行組と合流しました。最初に、林住職から挨拶があり、この機会に倒れかけたササが再生されている姿など秦楽寺の自然に触れてほしい、また自然の循環を守る観点から水脈を大切にし、切り取った草葉は土に返す方法で作業してほしいと話されました。また、ご住職は、人数分の軍手や虫に挿されないよう軍手の中にはめるビニール手袋、バンドエイド、消毒液も用意されおり、ソムリエの会の美化奉仕活動についても、秦楽寺として「おもてなし」の気持ちをもって迎えたいという話をお聞きしていましたが、まさしくそういう気持ちでお迎えくださったのだと思いました。

ご住職の合図のもと、まずは庫裏の入口周辺の庭から作業をはじめました。鎌は使用せずに手で作業を行い、庭の縁にあるササの葉や草を手で引き抜いて集め奥の方にやり、抜いた後の土をならしました。次に、阿字池の周辺についても、同様に作業を進めました。ただ、天候が不順だったため、1か所の作業は短時間で行うこととしました。



途中、雨が少し降り出しましたので、ご住職と相談し、雨のかからない本堂で拭き掃除の作業をおこなうこととしました。本堂の濡れ縁、勾欄(こうらん)などを、ご住職が用意してくださった雑巾で拭いて、ほこり等をとりました。

その後、雨が小降りになったので、本堂の周囲に出て、落ち葉や落ちている木の枝をまとめ、土に返す作業を行いました。

途中で、雨が少し強くなってきたため、作業を切り上げて、本堂の外陣に全員が入り、ご住職が用意してくださったお茶とお菓子を頂きました。その後、ご住職が自ら作成された冊子を全員に配布され、それをもとにお話をされたので、全員でお聞きしました。冊子には、ご住職が描かれた挿絵とともにいろいろな書物から引用された文が掲載され、最後にその中に記載されていた本尊の千手千眼観世音菩薩の大悲心陀羅尼経を全員で唱えました。
今回の美化奉仕活動は天候には恵まれませんでしたが、秦楽寺の木々、草花といった自然とのふれあいやその空気を感じることが出来ました。最後になりますが、ご住職は、お寺のまわりとの共生をめざして秦楽寺を守っておられ、また風通しや水脈を大切にしておられ、参加者の皆さんにも、それを感じてもらえば良いのではないかというお話をされていました。
保存継承グループが主催して実施する社寺美化奉仕活動は、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の社会貢献活動の一環で行っています。次回開催時も会員の皆さんに参加募集する予定ですので、関心のある方々のご参加をお待ちしています。
文・保存継承グループ 本井良明 写真・本井良明、仲 秀和