春日奥山巨樹巡り

12月2日、友の会ソムリエ交流部会奈良再発見サークル主催の「春日奥山紅葉と巨樹巡り」に参加した。
朝8時45分に近鉄奈良駅に集合。
前日から天気は思わしくなく、中止か決行か降水確率60%未満であれば決行するという微妙な展開になったが、幸い午前中は40%となり決行された。雨の心配があってか欠席者があり一行は9名となったが、雨対策には全員万全を期した。

いつもの如くリーダーから説明があり出発する
元林院町から今御門町を通り不審者一行は不審ガ辻町を経て奈良ホテルの敷地に入る。

ここから大乗院庭園を望み、169号線を越えて揄伽(ゆうか)神社に着く。
普段は閉門されているが紅葉の時期だけは開門されている。
急な階段の奥に朱塗りの社殿がありその周囲は今を盛りともみじが真っ赤に紅葉している。さらに後ろには黄金色の銀杏が控え紅葉と社殿が相まって見事な景観である。
門扉の所に掛けてあるこの神社の説明によると、平城遷都に際し元興寺と共に奈良に遷された。もとは飛鳥の神奈備で、元興寺の鬼門除けの鎮守社である。

境内を見渡すと「坂上の郎女」の万葉歌碑がある。
「故郷の飛鳥はあれど青丹よし奈良の明日香を見らくしよしも」とあり犬養博士の揮毫である。
この地域一帯がかつては奈良の飛鳥と呼ばれた所以である。
大伴坂坂上の郎女は額田王と並ぶ当世きっての女流歌人である。

このあと天神社に参拝。ここからは遠く明日香が望める。少し霞んではいたが耳成山が望めた。
高畑を通り奥山の道に入る。奥山を巡る道は柳生街道の滝坂の道はよく通られているが、今日通るのはかつて奥山巡りのバスが走っていて昭和30年代の終わりに廃止されたバス道を歩く。
この道は今は車は通行できないが、林業などの関係車両がたまに通行するため整備は行き届いている。
自動車道に入って進むとここはもう春日原始林の中である。次々と大きな木が茂っている。
いよいよこれからが巨樹巡りである。
いきなりイチイガシの巨樹がある。イチイガシは神社のご神木として境内によく植えられているとの説明があった。
すこし進むと、交番所がある。こんな山の中に本物の交番所があってお巡りさんが駐在し挨拶をされる。
春日山を守るためのものだろうか?駐在するのも退屈のようだ。
ここの上に大きなケヤキがあった。

ケヤキの大木を見上げる

先ほどからもみじやカエデ、ブナやイチョウが見事な紅葉を見せている。正に今日の主題のひとつである紅葉をめぐりながらの山歩きである。

紅葉の道を行く

珍しい木肌の大木がある。説明していただいたが名前は失念した。樹皮がめくれて木肌が見えているのである。

珍しいが名前は忘れました。どなたか教えてください。
いくつかの巨樹を見て次はツブラジイというブナ科の巨樹である。木肌が象の足に似ているといわれた。

ツブラ爺の木?

次に現れたのはイヌザクラの木だと思う。

まだまだ切りがないほど巨樹は続くが、次の杉の大木は見事なものである。
直径2m近く幹回り6mほどの大人三人でも手が届かない巨樹である。

平城宮跡の遺構展示館に杉の巨木をくり貫いて井戸枠にした出土品が展示されている。
これは直径1m50㎝あまりのものだが、これを見た来訪者の中には、このような大きな杉の木が本当にあるのですねと不思議な眼差しで見ている。実際には有るのですよと説明しても納得いかないようである。

ここでいったん巨樹巡りは終わって、滝坂の道の首切り地蔵に下る。出発して2時間30分、11時20分になったので小休止をした。
ここまでは数えきれないくらい巨樹を見てきたがその樹種の名前はあまり記憶できなく説明者に申し訳なく思った。もう少し予備知識を持ってくるべきであった。
少し歩いて「古寺の森」がある。これは寺社などの木造建築物の維持補修に必要な樹木を育てるため、ボランティアの方々がここ地獄谷国有林に植樹したもので、すでに50年余りの杉檜が育っている。
柳生街道石切峠に12時に到着。峠茶屋で昼食となった。ここで標高450m。

峠茶で昼食 女性メンバーからチョコレートなどの差し入れも頂く
あまりゆっくり休憩もせず食後すぐに出発して、当初は予定に入っていなかった芳山の石仏見学に行く。
本来は希望者だけが見学し、体力のないものは先に引き返すこととなっていたが、誰も引き返すものもなく全員行くという決意である。

急登が続く

峠茶屋からすぐに左折し山道を行く。初めは楽な道であるが途中からどんどん下っていく。
せっかく稼いだ高度がみるみる下がっていく。500m程歩いてやっと鞍部につきそこから急な道を登る。
息が切れそうになったところでお目当ての石仏に出会う。ここで標高520m。
さすがお勧めの石仏だけあって、見事なものである。由来も何も説明はないが三角柱のしっかりした石柱の前2面に阿弥陀如来立像であろうか2mほどの石仏が鎮まっている。近くの誓多林の住民が花など供えて守っているようだ。このような山中になぜこんな立派な石仏があるのだろうか。いつか村人に聞いてみたい。

ゆっくり拝観し再び急坂を下り登りに差し掛かる。左の谷底ではせせらぎの音が聞こえる。たぶん源流であろう。私はこの源流は下って木津川に合流すると思う。この芳山が分水嶺と思うと説明するとリーダーも同調されていた。自信がなかったので帰って地形図で調べるとやはりその通りであった。
このせせらぎはやがて安郷川となりさらに白砂川となって笠置橋の所で木津川に合流している。
ここで一応奥山巡りの予定コースは終了した。
あとは下って帰るだけである。
帰り道は雑談をしながらさらに美しく紅葉した木々を見ながらあるく。

途中同行の「まりも」さんからイチイガシとイチイとは全く別のものだと教えていただいた。
イチイガシは広葉樹で神社などによくある大木で、イチイは針葉樹で真紅の実をつける木で一刀彫などの材料になるとのことである。その日のうちに写真なども送って頂いた。
樹木や野草のこととなると知らないことが多く今回は大変良い勉強になりました。
今回は天候には恵まれなかったものの実に美しい紅葉や樹木に出会え本当に価値ある一日でした。ただ残念なのは道中は明りに乏しく写真がよく撮れなかったことが少し悔やまれます。
28000歩の山歩き、皆様お疲れ様でした。
また、お世話頂いた鈴木リーダーをはじめサブリーダーの方々本当にありがとうございました。

ソムリエ友の会 小北博孝