「文学の小窓からの風景 第3回目――高浜虚子『斑鳩物語』とスライド」 講演会感想記

7/6(土)実施・・・参加者61名「三和大宮ビル 6階会議室」

7/6(土)に前回と同じく三和大宮ビルで、浅田隆先生による「文学の小窓からの風景 第3回目 高浜虚子『斑鳩物語』とスライド」講演会が開催された。梅雨期のとても暑い日だったが、61名の参加、先生のお話に熱心に耳を傾けた。講演は前半が高浜虚子『斑鳩物語』のお話で、後半が高浜虚子、正岡子規、会津八一のスライドであった。

本日の司会の森原嘉一郎さん

高浜虚子は伊予松山生まれの俳人・小説家で、正岡子規に師事。本名は清で、子規により虚子と命名される。俳句雑誌『ホトトギス』を継承して主宰し、花鳥諷詠の客観写生を説き、写生文の小説でも知られる。

浅田隆先生の講演風景

『斑鳩物語』も写生文の手法で、斑鳩の景物を捉えている。
法隆寺をなつかしい(心がひかれるという意味)寺院として、県外からの旅行者が抱く法隆寺への思いで表現しており、歴史遺産として取り上げていない。
また、黄色い菜の花、白い梨子の花、濃い緑の燈心草(イグサ)の広がる斑鳩の田園風景に寺院を点景としている。

7/6(土)の浅田隆先生の講演内容

その点景の一つ、法起寺の塔の影によって時間の経過やお道と了然の心情が巧みに表現されている。
菜の花の蒸すような中で春の日を正面(まとも)に受けて恋心に満たされたお道の心情。
お道の浴びている春光を半身に浴びることによりお道への恋心、そして半身に塔の影を止めることにより、仏道修行に身を置く了然の心情を視覚的に表現している。
このように『斑鳩物語』では、「もの」の客観的描写で「情」を表現している。

浅田隆先生の講演に聞き入る参加者

さらに、法隆寺夢殿南門前の三軒の宿屋の存在により、当時の奈良市内と法隆寺間の距離を示唆。機織の織賃の下落により、現実の波が斑鳩の里まで押し寄せていることも描写し、短編小説の中で多くの情報を提供している。

『斑鳩物語』大黒屋

後半のスライドでは、『斑鳩物語』に関して大黒屋、熟した柿の実のなる木が撮りこまれた法隆寺の風景、夢殿、さらに法起寺三重塔、一面に菜の花が広がっている藤原京跡、正岡子規に関して對山樓角定、野球のユニフォーム姿、会津八一に関して様々な歌碑が上映された。

菜の花が広がっている藤原京跡

新薬師寺横の入江㤗吉記念奈良市写真美術館には、彼の撮影した「法起寺三重塔」と菜の花などの大和路の原風景が展示されています。一度、鑑賞されてはと思います。
次回の「文学の小窓からの風景 第4回目 森鴎外の奈良」は、8/3(土)に開催されますので、是非ご参加ください。

文:交流G史跡等探訪サークル 大村隆清  写真:同 小林俊夫