平城宮跡資料館の紹介
奈良まほろばソムリエ友の会代表の 小北博孝 です
毎日暑い日々が続きましがお元気でご活躍のことと存じます
さて平城宮跡は昨年の遷都1300年祭も終わり 今は静かな落ち着いた本来の姿に戻りました
それでも毎日かなりの来訪者があり その多くは奈良好きや歴史好き更には考古学に興味を持った方々と校外学習の学生さんたちです
平城宮跡にはボランティアガイドが200人以上登録されていて 朱雀門や大極殿 東院庭園などといった主要ポイントで解説を行っています また要望に応じて宮跡内をめぐるツアーガイドも行っています
私たち友の会のメンバーにもこのガイドとして活躍されている方は20人近くおられます
今日は歴史好きの皆様にこの平城宮跡資料館で最近新たにオープンした「考古科学コーナー」を紹介します
文化財を科学の面から解析したり保存するのが考古科学です
このコーナーには奈良文化財研究所の埋蔵文化財センターの「保存修復科学研究室」「環境考古学研究室」「年代学研究室」「遺跡調査技術研究室」が行っているさまざまな調査や研究を解説しています
これらは平城宮跡の解明や文化財の研究と保存活用に欠かせない重要な分野です
普段は社寺や史跡などに目が行きがちですが このような分野にも興味を持つのも面白いと思います
そのような中で私が特に興味を持ちましたのが「年輪年代学」です
年輪は一年間に一つずつ刻まれることから過去の年代がわかる唯一の資料です
これを利用して出土した柱や木彫美術品などの木材の年代が分かる仕組みです
今 切り倒された木の切り株の年輪の数が仮に500本あれば その木は今から500年前(西暦1511年)に芽を出したということがわかります 年輪はおおよそ同心円状に刻まれていきますが年輪と年輪の幅はそれが刻まれた年の気候などの影響から一定ではありません これは同地域同種の木であれば共通です
同様の木を何十本と調べて年輪幅を標準化しパターン化してグラフに表したのが「標準年輪曲線」といいます
すなわちここで500年間(西暦1511年から2011年まで)のグラフができます
遺跡などから発掘された柱はいつの時代の物か年代は未知です この柱に年輪が残っている場合この柱の年輪曲線のグラフを作ります その年輪曲線の形状が先ほどの「標準年輪曲線」のどの部分に当てはまるか調べます
パターンの波(何十年分以上)が重なる部分があればその最後の年代がその柱の切り出された年となります
例えば 発掘された柱の年輪曲線のパターンが「標準年輪曲線」のグラフの1500年から1626年までのパターンと重なりますと この柱は1626年に切り出されたということになります その後柱として使用されたのです
このように年輪年代学は樹木の年輪パターンを分析することにより年代を科学的に決定する 正に古代の世界を知る新たな物差しが出来上がったのです
なお この年輪年代学は海外では古くから使われていましたが 日本では奈良文化財研究所により1985年に確立され ヒノキの年輪パターンで2000年の年代を図る物差しが完成しました
年輪年代学が果たした役割として最大のものは 池上曽根遺跡の大型建物の柱の年代が紀元前52年の伐採であると判明しました そのほか法隆寺の金堂の心柱が594年 中門の大斗は685年と解明されました
以上 大変長い話を最後までお読みいただきありがとうございました