保山耕一さん 第5回「奈良、時の雫」上映会
11月2日、保山耕一さん月イチ上映会が奈良公園バスターミナルで開催されました。
今月の保山さん作品のテーマは「大和の月」!で、当会「奈良百寺巡礼 般若寺」とのコラボ。ゲストもたくさん、盛り沢山の内容でした。
最初のコーナーで保山さんから「今日はこの歌集について説明させていただきます」と言われ、ご登壇されたのは、まほろばソムリエの会の理事の松森重博さん。
「親しみをもって、僕らは『商店街の松森さん』と言ってるのですが、松森さんは、この月イチ上映会を一番初めに言い出された方で、いつも僕を支援して下さっています。このバスターミナルレクチャーホールという素晴らしい場所が全く使われていなくて、『ここを有効に使うためにどうですか?』とお声をかけてもらいました。」「そして、奈良県を動かして、奈良まほろばソムリエの会も動いてもらっています。今、この上映会を開催できたのは松森さんの最初の一言のお陰です。その松森さんが『大和まほろば』という歌集を出されました」と紹介されました。「商店街の松森さんです!」(拍手~‼)
松森さんは、10年くらい前から(毎日新聞-やまと歌壇-に高校時代の先生が選者に出られているのを見つけたことをきっかけに)短歌を始められたそうです。(実は賞もたくさん取っていらっしゃる)「今までの500首くらいが貯まりましたので、歌集にどうかと前から言われておりまして、この度発行しました。」と。奈良愛に溢れた短歌を写真映像でいくつか紹介され、保山さんを詠んだ歌『奈良の美を映像に撮り奈良の良さ伝うる君の仕事讃えん』をお披露目されました。(会場は「うわぁ~」とほんわか温かい空気に包まれます)
保山さんは「もう、褒めごろしです!」と照れ笑い。
そして「松森さんのこの本は、あの万葉集の解説で有名な奈良大学上野誠先生も『オール大和、大和応援歌。しかし、声高に語らないのが松森流』と言ってはるんですよ」と。
また、平成19年に夢CUBEをオープンし、それをきっかけに若い人達が戻ってきたという夢CUBEの写真、30年前の商店街の写真が映し出されます。
保山さん「誰も歩いていなかった絵にかいたような商店街でした。それが今やこれ‼」と言われ → 『もいちど夜市』のにぎやかな人・人・人でいっぱいの商店街の写真。(会場は「え~!」「すごい~」「ほぉ~」と、どよめきの声)
そして、オープニング生演奏は、すみかおりさんのオリジナル曲で始まります。
― 映像 藤原京のコスモス ―
「さぁ、それでは素敵なゲストをお迎えします!」とならどっとFM中川直子局長が、今や全国各地で演奏されるハープ奏者、川島憂子さん(桜井市の標高600mくらいの所にお住まい)をご紹介。上映会初めての生のハープ演奏です。
― 映像 月の光 ―
そして、保山さんのお話。
「月はむずかしい。電球を撮るようなもので、でも撮らなくてはいけないのがプロ!月を安物のカメラで、どうしたらうまく撮れるのかをずっと考えて…。一か月で満月と新月がこんなにも変わる。月が太っていって…この前、満月やったのに、もうこんな月」
「僕は月齢一日目の細い細い月でないと心が動かないんです。今日はそんな月、本当にゾク~っとする月!有明の月、夜明け前の月!世の中にこれ以上美しいものはない‼今は月に魅せられています」と。
― 映像 大和の月 ―
平岩雅子さんのソプラノ『月の砂漠』と野上朝生(ともお)さんのピアノ演奏が、私たちを保山さんの世界に深く誘います。(会場ではすすり泣く声も・・・)
ピアノ演奏の野上さんいわく「保山さんの投げかける風に、僕の演奏は風鈴や鈴のようになれば」と。
さぁ、そして、次は、春日大社元権宮司・岡本彰夫先生とスペシャルゲスト・スペインを拠点にご活躍の世界的なピアニスト川上ミネさんの対談です。
まずは、川上さんのピアノ演奏で
― 映像 祈りの桜 長谷寺 ―
川上さんは、3歳からピアノを始め、やりたい音楽を探し求めてスペイン・京都に拠点を置かれます。今回の対談で、岡本先生が、御神楽のこと等、実演もされながら詳しく教えて下さいました。川上さんは、メトロノームで割り切れない音楽、五線譜に書けない日本古来の音楽・御神楽の話に目が輝き、興味深々です。そして「日本の音楽には間があって、遊びがある。これが大切!」ということに共感されていました。
岡本先生がおっしゃるには「御神楽はね、適当に打つんです。これが大事!『適』したところをカンで『当』てる」「拍子はゆとりが出ると遊べるんです。西洋音楽にはない。西洋にはわからない次元です」(日本古来の音楽の素晴らしさを改めて知ったお客様方は「へぇ」「なるほど~」と盛んに感心しているご様子)
そして川上さんは「保山さんの映像には『絶対的な適当』があるんです。それらはすべて保山さんの体に染みついて、だから腑に落ちて感動するんです」と。
そして、岡本先生は「ある時、すべてが嫌になって放浪に出られたんですよね。」と川上さんに質問されます。川上さんは「鍵盤のサイズは西洋人だけで決めたサイズ。東洋人の体に合っていない。五線に書いた音符は合ってない。視力は悪化するし、楽譜は、当時は重くて持ち運びがたいへんだったし」などなど。
岡本先生「しかし、よく捨てられましたなぁ」
川上さん「捨てた時、実は何も要らない。自然があって、風、雨、虫がいて・・・楽譜が無くてもいいのではないかと…」
岡本先生「すごいところまでいきましたなぁ。普通の人は、できませんな」などとおっしゃられていました。(もう、お二人のお話は次元が高すぎて凄すぎます)
そして、川上ミネさんのピアノ演奏で、
― 映像 やまとの季節 七十二候 ―
そして、そこに保山さんも登場され「めざしているものは自然。自然って作為がないんです。」と。岡本先生は「こんな天才二人の組み合わせに気づいたプロデューサーが凄い!神の域に近いと思うくらいの音楽と映像のコラボ!」と大絶賛されていました。
保山さんは「奈良とご縁のあるこんな素晴らしい人をなぜ呼ばないか、ムジークフェスタ!ウイーン少年合唱団より破格に安い‼」と会場の笑いを誘っていました。
そして、シンガーソングライター氷置晋さんの新曲「やまとし うるわし」の映像後
― 保山さん映像詩 平城宮跡 × 氷置さんの歌「あしあと」 ―
そのあと、氷置さんのギターに合わせて、会場の皆さんと全員で「ふるさと」を大合唱。そしてここで素敵なサプライズ!岡本彰夫先生のハッピーバースデイ―‼皆でお祝いすることになりました。シンガーソングライターの大垣知哉さんが花束を持って登場。出演者は壇上でクラッカー!そして岡本先生の似顔絵のバースデイケーキ‼岡本先生は恐縮して照れておられましたが、会場は和やかな雰囲気で笑顔いっぱいでした。
さぁ、そして、第2部『奈良百寺巡礼』
今回は般若寺・工藤良任ご住職と当会石田一雄理事がご登壇。般若寺の激動の歴史と春の山吹、春秋のコスモス、冬の水仙など花のお寺としても有名であることを話されました。
― 映像 般若寺 コスモス ―
石田理事は、「般若寺は、『奈良百寺巡礼』で一番初めに出てきます。そして、奈良のお寺で一番ご住職に会いやすい。というのは、受付に座っておられる。たまにユンボを運転している。本堂によく似た人が座っていますが、弟さんです(笑)」と始まりました。
工藤良任ご住職は「お寺で生まれて、住職になったのは私が初めて。」とのことで、数々の運命を背負い、時代を耐え抜いてきた般若寺。その中で、波乱万丈の人生を送られた工藤ご住職。東大寺南大門すぐ横の学校へ通っていた時、園芸部をご指導されていた東大寺のお坊さんだったという先生に出会います。
そこで初めて花を育てることを教えられ、それが今にいきているそうです。
「花は生き物。根を生やしてやらないといけない。ということは、土づくりが大事。土づくりが花をさかせる秘訣です。そういうことも教わりました」と。
そして、コスモスへの想い‐株分けからお寺の復興に至るまで一役をかってくれたコスモスのお陰で復興ができた話‐など詳しく教えて下さいました。
「お寺も私も波瀾万丈。それを結びつけてくれているのがコスモスなんです。」とご住職は今、季節の花を楽しめるようにと、それはそれは愛情いっぱいにお世話をされていらっしゃるようです。
また、昭和39年石塔解体修理の際、塔内より発見された秘仏・30㎝ほどの小さい白鳳時代の阿弥陀仏の話や5㎝ほどの大日如来像を含む胎内仏三尊や多数の納入宝物が見つかったことなど驚きの事実が次々と現れた時の話などして下さいました。
司会の村上有利さんは、「虫眼鏡で見ないとみられないほどの小さな仏像です。コスモスの時に合わせていらして下さいね。ご住職、普段は受付におられますが、この時はお堂の奥におられますよ」と締め括られました。
さぁ、そして最後は、岡本先生の直筆の色紙をいただけるという大争奪ジャンケン大会!おおいに盛り上がって、終了となりました。
次回は12月7日(土)吉野山・金峯山寺です。『奈良百寺巡礼』は長岳寺!当会からは保存継承グループでご活躍の久門たつお理事が登壇されます。さて、今度はどんな素敵な上映、トーク、企画があるのでしょうか楽しみです。毎回何が飛び出すかワクワクの保山さんの月イチ上映会、たくさんの方が次回チケットを購入して帰って行かれました。
写真: 松森重博理事、広報G増田優子 文: 広報G増田優子