保存継承グループ 橿原市:上品寺町の「シャカシャカ祭」見学記
奈良県内には、御所市・野口神社の「汁かけ祭」や田原本町の「鍵の蛇巻き」「今里の蛇巻き」等、藁(わら)で蛇の形をした綱を作り、それを祀る行事がいくつかあります。
毎年6月5日に行われる橿原市上品寺町の「シャカシャカ祭」は、県内で一番有名な「ノガミ(農神あるいは野神)祭」とのことで、古くは旧暦5月5日に行われていました。
蛇の作成から最終のご神木への蛇巻きまで、のんびりと見学しました。
シャカシャカ祭では、その年に地域(上品寺町)で長男が生まれた家が、当屋(頭屋)を務めます。少子化の進んだ現在は、当屋は世話役のような人が務めます。
当日の午後1時から当屋宅の庭で稲わら(以前は麦わら)で約10㍍、重さ約20㌔㌘の“じゃ”(蛇)をつくります。上品寺町の田んぼで昨年とれた稲わらを使っているとのことです。
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上あごと下あごは、桟俵(さんだわら)という米俵の両端につける円形の藁ぶたを使います。
今年初めての試みで、ビワの実で目がつくられ、完成。なんとも可愛い“じゃ”が出来上がりました。
午後3時から当屋宅で作られた、ヨシの葉で包んだチマキが2個、“じゃ”の顔の前に供えられました。長さ約20㌢、直径約10㌢の棒状の大きなチマキです。
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午後4時ごろ、当屋に青いハッピを着た小学生以下の男子が20人ほど集まってきました。
赤いハッピを着た当屋の児を先頭にして、子どもたちは蛇の横に並びます。
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午後4時、“じゃ”を担いで、さぁ出発。ただし、昔からの風習で担ぐのは男子のみです。
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途中、現在は無くなった池の跡で“じゃ”に水を飲ませます。池の代わりに、大人が運んできたバケツの水をしゃくで汲んで、口にかけます。
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水を飲ませ終わると、折り返して上品寺町の集会所の方に向かい、もう一度池の跡とされる場所で“じゃ”に水を飲ませます。こうして約30分余り練り歩いたあと、集会所横の大きな榎の木(ご神木)に“じゃ”を巻き付けます。木の上に登って巻き付けるのは、大人たちです。
木の上方の二股になった太い枝の間に頭を掛けられ、赤い舌をだらりと垂らした“じゃ”は、少し疲れたような表情にも見えます。
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“じゃ”が木に掛けられると、祭りは終了。ご神木の前で記念撮影をして解散です。
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●シャカシャカ祭の由来
元々は、農家を継ぐのが長男であることから、長男が生まれた家が当屋となって、麦わらで、長さ5㍍、直径30㌢足らずの蛇(じゃ)を作っていました。それを、村の7才から15才までの男子たちが担いで村を練り歩き、水を飲ませるため南北2つの池の中に“じゃ”をつけた後、農神さんの木にそれを巻き付けて、お神酒やチマキを供える、というものでした。
祭りの起源は、ここにあった大きな池を埋める時に殺した大蛇の霊を弔うためという説もあります。
シャカシャカ祭りの語源については、蛇が竹やぶなどを通る際にシャカシャカと音がしたことから名が付けられたなど、いろいろな説があります。
今後も、元気な子供たちと地域住民の協力により、「シャカシャカ祭」が続いて行くことでしょう。
保存継承グループ 文:春日由広、写真:小倉つき子