ソムリエンヌ なら歴史芸術文化村訪問と石上神宮正式参拝

ようやく秋めいてきた10月3日、ソムリエンヌ18人が天理市に集いました。

なら歴史芸術文化村文化財修復・展示棟の見学です。修復工房見学ツアーは休館日を除き毎日開催されていますが、この日はソムリエンヌたちだけの団体見学です。この棟は「歴史的建造物」「考古遺物」「絵画・書跡等」「仏像等彫刻」の4つの分野の修復工房を公開し、多くの人に文化財保護や技術継承の大切さを伝えています。この4分野の工房が一堂に集まっている施設は全国でもはじめてとのことです。
学芸員さんのもとツアーが開始です。

「歴史的建造物修復工房」では現在、多坐弥志理都比古神社本殿の修復が公開されています。通常の修復では修復場所に工房を構えるそうですが、解体した木材をこちらの工房に持ち寄り修復されています。その時代、時代に合わせた工具や材料を使用され修復されるそうで、作業の様子を見学することができました。また宮大工の方が公務員というのは京都府と奈良県だけとのことでした。

「考古遺物修復工房」土器の修復では①洗浄作業→②注記作業(土器の表面に出土した遺跡・遺構・層位・日付の情報を1点ずつ面相筆で記入すること)→③接合・修復作業→④実測作業という工程を経て土器が復元されると説明を受けました。欠けているジグソーパズルのパーツを合わせていき、また無いパーツを作成するような根気のいる作業です。

地下に移動します。*ここからは写真撮影ができません。
「絵画・書跡等修復工房」では當麻寺奥院蔵・江戸時代の當麻曼荼羅図や當麻寺中之坊蔵・中将姫肖像画の修復状況を見学することができました。慎重に絵の裏紙を剥がしていく工程や修復で使用される糊を作る工程や国栖で作られる宇陀紙のことを説明され、ソムリエンヌのみなさん興味津々で学芸員さんに質問の嵐でした。
「仏像等彫刻修復工房」では公益財団法人美術院の修復のスペシャリストが活動されています。ミツバチが巣を作ったことで有名になった當麻寺の阿形像が修復を終え、お寺にお戻りになり次に吽形像が工房にお出ましになっていました。大きな金剛力士像がお寺ではない高い天井の広々とした工房に雄々しく立たれていたのがとても印象的でした。また野迫川村平区の寄木造の釈迦如来像を解体した姿も見せていただきました。後世に塗り直された箔を残すか取り除き修復するかを数人で議論し、その仏像にとって最も良い方法を考えて修復を進められていると説明をうけました。

どの工房もスペシャリストの知識と技術の結集で修復が進められており、このツアーでは文化財保護の大変さと伝統を守る技術の継承の重要性を知るとても貴重な機会となりました。

見学ツアーが終了し、次はお待ちかねのランチタイムです。

天理市の旧家の日本家屋をリノベーションして作られた素敵なレストラン「Le Rêve」へ移動です。
旬の素材を活かしたランチコースをいただきました。

お食事の合間にはソムリエンヌ本田代表から今後の活動予定を説明されました。

今後も奈良を深掘りする企画がたくさんありとても楽しみです。
そしてデザートです。みなさんのプレートには松浦さんから差し入れていただいた宇陀銘菓の「きみごろも」がプラスされ、元々あったかのように並びました。彩りも素敵でとても美味でした。

お食事も終盤、本田代表から松浦元代表へ参加者からのプレゼント贈呈です。
ソムリエンヌの代表として会を牽引していただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

次は石上神宮の参拝です。
石上神宮は日本最古の神社のひとつで「日本書記」に記されている「神宮」は伊勢神宮と石上神宮だけという由緒ある神社です。

ご祭神 布都御魂大神
    布留御魂大神
    布都斯魂大神
ご由緒は
「ご祭神は神武天皇御東征の砌、国土平定に偉功をたてられた天剣(平国之剣)とその霊域と布都御魂大神、鎮魂の主体である天璽十種瑞宝の起死回生の霊力を布留御魂大神、素戔嗚尊が八岐大蛇を退治された天十握剣の霊威と布都斯御魂大神と称え、称して石上大神と仰ぎ第十代崇神天皇七年に現地石上布留の高庭に祀られました。」

国宝の社殿で正式参拝をおこないました。
本田代表により玉串奉奠です。(写真は奉奠後に再現を撮影です)

参拝後、禰宜の方から石上神宮のご由緒や神剣フツノミタマが発見された禁足地や七支刀などのお話を聞くことができました。

その中で「参拝時に唱えられていた呪文のような祝詞は、亡くなられた人をも蘇らせるほどの霊力があるのです。」と説明がありとても気になり調べてみました。
石上神宮に伝承されてきた布留の言(ふるのこと)は霊力が強い言葉です。
「ひと ふた み よ いつ む なな や ここのたり ふるべ ゆらゆらと ふるべ」
『先代旧事本紀』によるとこう唱えながら十種神宝*をゆっくりと振り動かしなさい。そうすれば死んだ人さえ生きかえると書いているそうです。この「ふる」は「振る」につながり石上神宮の鎮魂は魂を揺り動かし十種神宝の力をいただいてより元気な活力ある心身になることなのです。この布留の言と十種神宝を用いて神武天皇と皇后の長寿を祈ったことが物部氏由来の石上の鎮魂法(たまふり)、宮中における鎮魂祭の起源と伝えられています。
*十種神宝(とくさのかんだから):物部氏の祖神・饒速日命が地上に降りられるときに天照大御神から授けられた十種類の神宝

祈りが古代の世界から今につながる不思議。今回の集いの最後に石上の神様からソムリエンヌたちはとても大きなパワーをいただきました。これからも奈良を楽しみ、パワフルに活動を続けていきたいと思います。 

女性サークル(ソムリエンヌ)文 森川祐美  写真 松浦文子・森川祐美