高田長老の講話と斑鳩の里

12月10日 交流部会社寺探訪サークルの催しに参加した。
今回は「法隆寺高田良信長老のお話と斑鳩の里散策」である。
今日は今冬一番の冷え込みだそうで出足も鈍りがちであったがJR王寺駅からバスで会場の斑鳩公民館に向かう。
さすが高田長老の話が聞けるとあって多くの会員の申し込みがあり会場はほぼ満員の状態であった。

長老は著名な方であるのでご存知の方も多いと思うが改めて簡単に紹介する。
長老は1941年の生まれで13歳の時法隆寺に入山。龍谷大学大学院を卒業。法隆寺執事、法起寺住職などを経て第208代法隆寺管主・聖徳宗5代管長に就任。百済観音堂の落成を機に退任。現在は法隆寺長老。住まいは実相院で住職。歴史学者でもある。
10時半丁度に講話が始まる。先月もボランティアガイド研修会で長老のお話を聞いたが、その話ぶりは落語家の桂米朝を思わせるようなゆっくりとしたユーモアを交えての話である。しかも正確な大阪弁で流暢に話される。今の若いものは大阪弁を正しく話せないものが多いと思うが、久しぶりに耳に心地よく響く。

高田長老の講話

講話のテーマは、「私の法隆寺学」で副題として「法隆寺昭和資財帳編纂」である。
即ち奈良時代に編纂された流記資財帳から明治資材帳を経て昭和資財帳へと進んでいくわけであるが、その過程で資財即ち宝物の内容もも大きく変化していくのである。
講話の全文を記すことは出来ないが、特に印象に残ったものをいくつか紹介する。
まず資財帳は所蔵する宝物を分類してその状態や数量を著すのであるが、この宝物も長い歴史の中で流失したり特に明治初期の激動の中で献納や売却もあったがその反面新たに発見されたものも多くあったのである。
また法隆寺伽藍では長い年月の間の損傷もありこれを補修する資金も不足し、1878年には寺宝300点余りを皇室に献納して1万円を下賜された。
この献納品は一時正倉院に遷された後1882年に帝室博物館に収蔵され現在は東京国立博物館法隆寺寺宝物館に保存されたいる。
またかつては「出開帳」というのがあって寺の宝物や子院の物を各地の地域に出向いて一般に公開する。そして金銭を得るということもした。
更には宝物を譲渡した。有名な百万塔の譲渡である。
百万塔は称徳天皇が藤原仲麻呂の乱で戦死した兵士の菩提を弔うためと鎮護国家のために大陀羅尼経を収める小塔を100万個作り、法隆寺、大安寺、元興寺、東大寺、興福寺など10か寺に配ったがその殆どは焼失した。
現在は法隆寺にのみ4万数千点を所蔵しているが、これをかつて明治の終わりに譲渡したのである。

百万塔
大陀羅尼経
譲渡の証書

譲渡に際し寄付された金額は最も状態の良いもので35円 次いで25円 20円 15円続く。
今の金額では換算は困難であるが市場では300万円とかの噂もある。
さらに話は続くが長老は若いころから伽藍の天井裏にある古文書や什器を見つけては先代の佐伯管主に相談をしたものである。これも今では寺の宝となっているものもある。
また寺宝は流失ばかりではなく、流入もあった。
有名な話で、大神神社の大御輪寺からは地蔵菩薩立像が明治6年に一旦末寺の北室院に遷され、その後に法隆寺金堂に移安され国宝となっている。現在は百済観音堂に安置されている。
長老の話はまだまだ尽きることはないが、このような経過を経て昭和資財帳が編纂されたようである。
このような話はおそらく長老が語って頂いた裏話の一部なのである。
最後に予期しなかった寺宝を多く発見したこと、多くの物を捨てなかったことが幸いしたとして講話を締めくくられた。
12時丁度に講話が終わり昼食タイムとなった。
午後は斑鳩界隈の散策である。
出発の前に公民館前で集合写真を撮った。

最初の向かったのは吉田寺である。
本堂に上がり大和の大ぼとけ、丈六の木造阿弥陀如来坐像を拝む。
説明書によるとこの寺は天智天皇の勅願で987年に恵心僧都源信が開基したとある。
本尊の阿弥陀仏は県下最大の阿弥陀様でどっしりとしておられ優しいお顔をされている。

吉田寺本堂

ここを辞して龍田神社に向かう。
途中雨が落ちてきた。今日は雨の予想はさほど無かったのだが、寒気が流れ込んできたのか。
龍田神社は聖徳太子と龍田大明神の説話が有名であるが、法隆寺がこの神社の社務を管理している。

一行は旧街道を進み次は藤の木古墳に向かう。

藤の木古墳は説明するまでもないが、1985年に調査が始まり数次の調査を経て超一級の金堂製馬具や金堂製の飾履などが出土し国宝に指定された話は有名である。
以前この墳丘の公園に石棺のレプリカがあったがい今は斑鳩文化財センターに移されている。

棺のレプリカ(原寸大)この中から2体の被葬者が見つかった
斑鳩文化財センターで藤の木古墳についての映像をみて、展示室では出土品などを見学する。
メンバーの中にはかなり詳しい方もおられ説明されていた。

センターを出ると雨脚がやや強くなっていた。
リーダーや世話人の方々の協議でここで散策は終了となった。
あと少しで予定のコースを回れるところであったが、雨には勝てない。
最後にもう一度集合写真を撮ってお開きとなった。

リーダーの小林俊夫様 集合写真を提供いただいた小林誠一様 そして本日の企画からお世話をしていただいたサブリーダーの皆様、また本日ご参加の皆様方、大変お世話になりありがとうございました。
またこの次皆様と共に素晴らしい社寺探訪をしたいと思います。

ソムリエ友の会 小北博孝