9/6 浅田隆先生の折口信夫 講演会

浅田先生の“名作文学で奈良を楽しみませんか”の3回シリーズの第1回目―折口信夫「死者の書」をめぐって―が9月6日(土)にサンワシティ5階で開催された。49名のうちソムリエの会員以外の方が4割近く参加して下さったことは、目指す方向に近いものだった。
浅田先生の講演内容は30分も超過するほどの熱弁だった。大津皇子が眠る「した した した」岩を伝う雫の音、中将姫の魂を呼び寄せる「こう こう こう」という叫びなどの表現は私達を幻想の世界に引き込まれそう。
藤原南家の郎女(中将姫)が極楽浄土の世界を感じ、彼岸中日に、光り輝く雲の上に金色の髪、白い肌をした貴人を見た。墓地に埋葬されている大津皇子の霊が、呼びかけられて五十年の眠りから覚まされて目の前に見たのは、生前慕っていた耳面刀自とも南家の郎女とも見て取れる。姫は裸の貴人に着せ掛ける衣を蓮糸で織り上げ、その布に描き上げた絵こそ曼荼羅であった。
浅田先生の話はこの辺りから宗教的世界に入り込む。彼岸に西空に沈む夕日を拝み極楽浄土を想う日想観の思想、そして聞きなれぬ言葉ですが「景教」についての考察。日本へのキリスト教の伝来は戦国時代の1549年とされ、中国にも天主教の布教は13世紀とされている。しかし実際は東方教会系の「景教」という教えの内容は、唐の時代に早くも伝来されていて、遣唐使や後の空海や最澄らもこの影響を受けている。知らずしらずの中に支那経由の西欧伝来文化の影響下「唐代の衣服を纏うキリスト教的思想」が日本にも早くから入ってきていたとの展開。「死者の書」で南家の郎女と滋賀津彦の出合いと幻想の舞台は折口信夫の心の中に、遠く西域からの景教の思想が描かれているのだろうか。