「奈良、時の雫」第2回「祈り」保山耕一さん上映会

8月3日(土)保山耕一さんの作品上映会の第2回「祈り」が奈良公園バスターミナルで行われました。この催しは当会とコラボで月1回第1土曜日に開催されています。
7月の上映会では、予想をはるかに上回る来場者でした。入場できずに帰られた方、会場ロビーのモニターで観られた方続出!(音は出なかったけれど映像だけでもと…)ということで、まずは本番10分前の反省会から始まりました(もちろん今回も満員御礼!)

本番10分前の反省会
前回のことを誠心誠意お詫びされる保山さんと『ならどっとFM』社長の中川直子さん。何度も何度も申し訳なさそうに頭を下げられていました。「ならどっとFMって本当少ない人数なんです。最低賃金かと思うくらいで運営されていて。奈良って本当スポンサーがつかない。」と本音をちらり。
「でもね、そういうスポンサー・大企業に頼らないで、カンパが集まらなかったら自腹でやる!」「皆さんがスポンサーで、皆さんの力で成り立っているんです。前回のカンパのお陰で、あと2回分は開催できます。」
「いつも『ありがとう』ってよく言われるんですけど、こちらが『ありがとう』なんです。ほんまに!」って。「僕は奈良の魅力を発信したいんです。」と強いお言葉から、保山さんの真心が伝わってきます。「『三方よし』って言うじゃないですか。奈良県とゲストの方々とお客さん。そうやって成り立っていけるといいなって思っています。」
そして、前回の上映会を終えた後に届いたメールやハガキのお話をしてくれました。「NHK『こころの時代』を拝見。車で2時間かけて行きましたがすでに満員!入れませんでした。会場ロビーのモニターを観て、『良かったなぁ、良かったなぁ』と感動して帰りました。」というご夫婦を紹介。
保山さんは「会場の外の音の入らないモニターで映像だけを観て『良かった、良かった』って言わはるんですよ。そして2時間もかけてまた帰っていかれる…僕はもう夜も眠れないほど自分を恥じました。涙が止まりませんでした。今も…」と。

図書情報館、国営平城京跡歴史公園からのお知らせ
ここではまず、県立図書情報館の伊藤さんを紹介。「ここの手作りのチラシ、すごく面白いんですよ~」って保山さんお薦めです。続いて平城京跡歴史公園の夏休みイベントのお知らせや奈良公園バスターミナル竹田博康室長の「ワンポイントまほろば講座」。今回は奈良公園のディアラインのお話でした。

五條のひまわり
さて、いよいよ「五條のひまわり」の映像です。こんなに美しくなつかしい日本の原風景が奈良に残っているなんて!それもピアニスト・すみかおりさんの生演奏とコラボで観られるなんて。やっぱり本当に贅沢‼(ご覧になりたい方は、なんと!保山さんはYouTubeで発信して下さっていますよ~(^^))
うっとりとしていると、おやおや、次は我がソムリエの会副理事長・雑賀耕三郎さんの登場です。

奈良百寺巡礼~安部文殊院~

当会ベストセラー本『奈良百寺巡礼』から毎回1つのお寺を選んでご紹介という企画。雑賀副理事長は「今日の映像を持って浄土に行けば、えん魔様が『おぉ、こんな映像を持ってきたのか。許してやろう』とおっしゃって下さるのでは?」と言われると、会場はどっと笑いにつつまれていました。そして、この日の本の売れ行きは約100冊!

今回は、安部文殊院の植田悠應(ゆうおう)副住職をお招きしてのトークタイム。お寺のご由緒や「三人寄れば文殊の知恵」のこと、受験生だけでなくボケ封じのことも話されました。そういえば、ボケ封じのお話では、日頃の生活で良くない習慣を教えて下さいましたよ。
「一番良くないのが、テレビの見過ぎ!情報が一方通行ですから」と。そして「一番危険なのがテレビに喋りかける人」ですって(会場では苦笑いする人がチラホラ)。ちなみに、良いことは「旅に出ること」だそうで「いろいろ想像したり、次はどこへ行こうかとか考えるのがいいんですよ」ということでした。
安部文殊院といえばお花!にも注目です。毎年9月中旬にはコスモス迷路ができあがります。実はこの迷路、年々出口へ抜け出るのが難しくなっているようで、中で助けを呼ぶ人もいるそうです(会場:笑)また、パンジー8000株で作る干支も大人気です。この干支は安部文殊院ホームページに掲載されているので、次の年の干支を年賀状に使われる方もいらっしゃるとか(なるほど!グッドアイデア)。
保山さんいわく「撮影に行った時、植田副住職がドロドロになって、コスモス迷路を自分で作ってはるんですよ。業者の方かと思いました」(会場:笑)「でも、ドロドロになって、汗だくになって作業してはるお姿を見ただけで、『あぁ、いいお寺やなぁ』と思いました。」「おもてなしは、あえて大和茶!黙っていたらわからない。コストをかけてでも大和茶を出したいというその思い!その心配りに僕は撮影に行っても癒されるんです。」と。
「『どんな時でも迎えてくれる』これが奈良のお寺のいいところです。」「皆さん、ぜひ足をお運びください。」とおっしゃっていました。
そして、会場は一気に今回のテーマ「祈り」へのいざないに変わります。音楽は一切流れることはなく、ひたすら植田副住職の声明。その声の響く中、流れる雲、清らかな水、風、山、安部文殊院本堂、境内、渡海文殊群像、月、雲、額の汗・・・もう会場は静まりかえって祈りの場に!あちこちで手を合わせる方がいらっしゃいました。
そして、保山さんより来月(9月7日)の予告
「来月は聖林寺です。(9月チラシの写真には観音様の美しい指)この手を見ただけで、優しさが伝わります。」「けれどね、びっくりするくらいお寺に人が来ないんですよ。」と。そして「映像詩は『かすがの煌めき(きらめき)』。今から3年前に僕が遺書として春日大社に奉納した映像です。まぁ一度奉納したものなんですけど…これが最後です。」と。(次々に観たい映像を予告される保山さん。そりゃぁ皆さん観てみたいと思われますよ~)
「9月からは上映会チケットが1000円になります。その一部をお寺に寄進します。耐震工事のお金がないんです。1人でも多くの人から多くのお金を集めて、お気持ちを頂いて建築費にあててほしいということになりました。」「皆様どうぞよろしくお願いします。」とおっしゃっていました。

休 憩(休憩を挟むと見慣れない楽器がステージに並んでいます)
映像詩:蓮

野田真喜子さんのクリスタルボウルの生演奏に合わせて「映像詩:蓮」が始まりました。なんとも言えない心地良い音色にお客様の脳にはアルファ波が出現したのでは?しかもこれが保山さんの映像とピタリとはまる素敵なコラボ!

和蝋燭(ろうそく)の祈り
次は海龍王寺のイケ住(じゅう)こと石川重元ご住職と保山さんのトークです。石川ご住職は「保山さんのカメラからは〈圧〉が来るんです。カメラからくる〈圧〉に負けてしまうのです。保山さんは、観音様の前で全く別人になります。ごまかしが通じない。自分の120くらいを出さないといけない。自分の持っているもの以上を出さないと映らないんです。」とその時を振り返ってお話下さいました。

保山さんは「蝋燭(ろうそく)の灯りだけで観音様を照らすには、どこでどう撮ればいいのか」と考え続けます。「蝋燭は、日本に仏像が入ってきた時に一緒にやってきて、仏像を拝むために作られたのだから『蝋燭一本だけの灯りで新月の日に祈りましょう』」ということにたどり着き、そこから石川ご住職とのつながりが始まります。
石川ご住職もどのようにすれば、仏様への想いを伝えられるのだろうと考えていた時に保山さんから提案があったそうです。「大きな和蝋燭1本で仏様がほほえんだり、怒ったりしているお姿を映し出す。仏像だからこその灯りを保山さんの映像によって奈良時代の再現ができたのです。」と。
保山さんは「キーワードは『畏怖の念』なのです。物が残ればいいというのではないのです。」と「心がどう伝承されるかが大切!」と強く訴えておられました。
石川ご住職は、この夏、親子での修学旅行企画をされています。「子ども達もものすごく敬虔になるんです。背中はピシッとなります。仏様は見ている子どもの心にも訴えかけるものがあります」と。子ども達に祈りの本質を伝える機会を増やそうという活動もされているそうです。
保山さんはご住職のことを「平城京のために!残したい奈良のために!何ができるのかとこの暑い時に走り回ってはるんです」。そして「地域のために!地域とともに!『イケ住』のこと尊敬しています」とおっしゃっていました。また「明日も東京のまほろば館へ行くらしいんです。何事にも全力!東京では食べ歩き、グルメ情報まで取材してくるんですから。やりすぎ!」(笑)
でも「自分でやらないと納得できない。自分で見てきたこと、聞いてきたことを伝えたい。可能な限りやっていきたい」とおっしゃるご住職に、保山さんは共感し尊敬されていました。

20年目の祈り ―なら燈花会 2018-

ここでは、なら燈花会の会4代目「直前」会長の中野聖子(さとこ)さんとのトークから。「今年21回目、奈良の夏の風物詩になってきました。最大10万個、毎日つけて、毎日消します。警備代だけは出してもらいますが、あとは全てボランティアです」と。
最初企画案を出した時は、「木造建築の多い奈良で、裸火でそんなことをして、奈良公園を燃やす気か!」と怒られます。「灯り1つに消火器1つ置きなさい」と無茶を言われてしまいます。「でも、あきらめなかった!!」コップに水を入れ蝋燭を浮かべたら自動消火器になるという仕掛けを作ってOKをもらいます。「電気でスイッチオン!とつける灯りとは違うんです。このお祭り100年200年と蝋燭の火を灯すイベントだといいな」と中野さん。
保山さんは「春日大社前権宮司の岡本彰夫先生は『祈りのあるところなら1000年、2000年と続きますよ』と言われました」「無意識のうちに手を合わせてしまう不思議さ、真夏の夜をぜひ楽しんで下さい」と。
そして、保山さんは今回の映像のことを「夕日、鹿の表情、鳥が鳴いて春日大社と一体化していく。燈花会のあかりを通して、寄せ合っている、寄り添っている、そういう気持ちで撮りました」。「生かしていただいてありがとうございます!」と心をこめておっしゃっていました。
また「自分が地域に貢献できたのも中野さんのお陰」と言われて「中野さんの生き方にあこがれたんです。いきいきと地域のために生きて、まわりの人に愛されて。僕はなんで今までこういう生き方をしてこなかったんや。自分のことばかりやった」と。
こちらは、野上朝生(ともお)さんのピアノと平岩雅子さんのソプラノとコラボ!胸の奥まで響く生演奏です。たっぷりと堪能させていただきました。

保山さんは「元気なうちにこの奈良公園バスターミナルにグランドピアノを入れたい」と次の夢を語られます。「ピアノ祭りをしたいんです」「世界的なピアノを屋上へ持って行って、ちょうど夕日の時に演奏するんです」というのです。会場からは「わぁ~!」と歓声。「スポンサーは皆さんです。大仏様を造られた聖武天皇のようにというと大それていますが、そういう心で。子どもも100円という気持ちで。」(会場の方の笑顔、笑顔。もう賛同する気になっていますよ~)
「僕が『奈良はこんなに素晴らしいところです』って発信したら、あるご家族からメールをいただきました」と。「僕の映像を観てもらうのがあと2日早かったら…という思いがあったり…」「実は、東京からお父さんと娘さんの親子二人で来たかったらしいんです。娘さんはうつ病で…YouTube見ていてくれたらしいんですけど…自殺されて…」と。
また、余命2,3日の方で、奈良で生まれ奈良で育った方が、亡くなる前に氷置晋さんと作った僕の映像を観たいと言われて、送らせてもらいました。そして、それを観てから亡くなられました…、そういう出会いもありました。」保山さんは「私は皆さんの想いの中で支えられています。私は撮るだけ!行けるところまで行かなきゃ!そう話してくださいました。


最後は「桜」です。保山さんは「長谷寺の本堂から迎えられる桜。な~んか楽しそうに大空に舞い上がって、ひとしきり舞った後、最後は本堂の仏様のところに飛び込んで行く」そう優しくおっしゃっていました。祈りをのせて散る桜は人々の心の奥の奥にまで舞っていくことでしょう。
保山さんの映像は、奈良の景色はこんなにも美しく素晴らしい!と気づかせてくれます。今回もたくさん温かい拍手が、会場いっぱいにいつまでも響いていました。保山さん、素敵なひとときを本当にありがとうございました!そして今後の映像、企画も楽しみにしてるファンは間違いなく多いことでしょう(^^)
(盛り沢山のプログラムにどれもこれも魅せられて、全部書いてしまいました。長いレポートなのに、最後までお読み下さった方ありがとうございました。)

文:広報G 増田優子 写真:鉄田憲男